2026年5月12日
株式会社ラストワンマイル
取締役 伊藤美和 殿
取締役 市川康平 殿
ラストワンマイル労働組合
2026年5月11日付社内通知に対する抗議
当組合は、株式会社ラストワンマイル(以下「貴社」といいます。)に勤務する従業員を組合員とする、日本国憲法第28条に基づき適法に結成された労働組合です。
当組合は、2026年5月11日16時51分頃、貴社の従業員に向けて、当組合の結成を通知する電子メール(以下「本件結成通知メール」といいます。)を送信いたしました。
しかるに、貴社は同日中に、ビジネスマネジメント部発行・全社員向けKintone掲示板において、「【重要・注意喚起】本日16:51頃に受信した外部からの匿名メールについて」と題する文書(以下「本件周知」といいます。)を、全社員に対し周知されました。
本件周知は、その文言・態様に照らし、後述いたしますとおり、貴社の使用者としての法令上の義務に著しく反するものであり、看過することはできません。
よって、当組合は、組合員一同を代表し、貴社に対し、以下のとおり厳重に抗議いたしますとともに、申入れを行います。
なお、本抗議は、本件周知において貴社が指定された問合せ先である伊藤美和取締役および市川康平取締役の両名からの求めに応じて行うものです。


第1 当組合の結成に至った経緯および目的
1 当組合の結成に至った経緯
当組合は、本来であれば、健全な内部統制および誠実な労使コミュニケーションが機能している企業においては、結成される必要のなかった組織です。当組合の結成は、貴社内において以下のような事象が継続的かつ常態的に発生してきたという、看過しがたい事実を背景としております。
(1) 貴社の経営幹部による各種の不正行為に関し、社内の内部通報制度に基づき通報がなされたにもかかわらず、これが適切に取り扱われず、いわゆる「握りつぶし」が行われてきたこと。
(2) 内部通報がなされた際、通報内容そのものに対する調査・是正よりも、徹底的な通報者の特定(いわゆる「犯人探し」)が優先されてきたこと。
(3) 通報者であると疑われた従業員に対し、本来の業務内容と全く関連性のない部署への一方的・強制的な配置転換が行われるなど、事実上の報復的不利益取扱いがなされてきたこと。
これらの事実は、現在では貴社内の多くの従業員の知るところとなっており、もはや一部の限られた者のみが認識している事柄ではございません。
このような企業体質のもとでは、従業員が個人の立場で正当な意見を述べることは事実上不可能であり、また、個別に行動を起こした場合、報復的取扱いを受ける現実的な危険が存在しております。
こうした状況下において、労働者が自らの労働環境および職場の健全性を確保するためには、日本国憲法第28条が保障する団結権を行使し、労働組合という団体としての発言力を有する以外に方法はございませんでした。
当組合の結成、および本件結成通知メールが匿名の方式により発信されたことは、まさにこうした貴社の企業体質に対する自衛的・防衛的措置にほかなりません。匿名性は、当組合が望んで選択したものではなく、貴社の現状がこれを余儀なくさせたものであり、その原因は他ならぬ貴社経営側ご自身にあるという事実を、まずもって明確にしておきます。
2 当組合の目的─持続可能な発展という社会正義
当組合の目的は、貴社との敵対や対立そのものを志向するものでは決してございません。当組合は、貴社が東証グロース上場企業として、また社会的責任を負う事業者として、中長期にわたり持続可能な発展を遂げることにこそ、その存在意義の核心を置いております。
当組合は、以下の事項を実現することが、貴社・株主・取引先・顧客・そして従業員自身という、貴社をめぐる全てのステークホルダーの共通の利益にかなうものと確信しております。
(1) 経営の透明性と実効的な内部統制が機能する、健全な企業統治(コーポレートガバナンス)の確立。
(2) 内部通報制度が、報復のおそれなく実効的に機能する職場環境の整備および公益通報者保護法の趣旨の徹底。
(3) 労働者が、不当労働行為や名誉毀損的言動に怯えることなく、安心して職務に専念できる労働環境の確保。
(4) 使用者と労働組合との間における、対等かつ誠実な対話に基づく健全な労使関係の構築。
しかしながら、貴社の現在の企業体質、および本件周知に象徴される労働組合に対する敵視的な姿勢は、上記目的の実現とは著しく乖離しているものと言わざるを得ません。このまま放置されれば、貴社の中長期的な企業価値および社会的信用は深刻な毀損を免れず、それは結果として、株主、取引先、顧客、そして従業員のいずれにとっても看過しがたい不利益をもたらすこととなります。
当組合は、まさに貴社の健全かつ持続可能な発展のためにこそ、また従業員のみならず社会全体に対する責任の観点からも、本件について毅然たる対応を行わざるを得ないとの結論に至りました。
当組合の活動は、単なる労使対立団体としての要求活動ではなく、貴社の持続可能な発展と健全な労使関係の構築を志向する建設的な団体としての活動であり、社会正義の実現を志す立場からの正当な要求であることを、ここに明確に申し述べておきます。
第2 本件周知の法的問題点
1 憲法第28条が保障する労働三権の侵害
労働者が労働組合を結成し、運営することは、日本国憲法第28条が保障する団結権・団体交渉権・団体行動権(労働三権)の行使にほかなりません。当組合は、貴社の従業員が労働条件の維持改善等のために自主的に結成した労働組合であり、貴社の事業所内に成立した正当な団体です。
しかるに、貴社は、本件結成通知メールを受領するや、同日中に、当組合の性格や実体について何ら確認することもなく、これを「外部からの匿名メール」「当社とは一切関わりのない外部団体によるもの」と一方的に断定し、その上で全社員に対し周知されました。
これは、貴社の従業員が結成した労働組合の存在自体を否認し、あたかも社外勢力による違法行為であるかのような印象を全社員に植え付けるものであって、現組合員および将来組合への加入を検討する従業員に対し、組合活動を萎縮させる重大な効果を有する行為です。
2 労働組合法第7条第3号(支配介入)違反
労働組合法第7条第3号は、使用者が「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」を不当労働行為として禁じております。
本件周知には、以下のとおり、支配介入に該当する複数の問題が含まれております。
(1) 当組合の性質・実体を確認することなく、「当社とは一切関わりのない外部団体によるもの」と断定し、組合の存在自体を否認する内容となっていること。
(2) 当組合の正当な活動の通知を、「マルウェアへの感染」「フィッシング詐欺」「個人情報やアクセス履歴を取得されるリスク」と並列に位置付け、「むやみにリンク先へアクセスすることはお控えいただきますようお願いいたします」として、全社員に対しアクセスを萎縮させる呼びかけを行っていること。
(3) 「メーリングリストが不正利用された」「身元不明のメール」と断定し、本件結成通知メールの発信行為が、あたかも犯罪的違法行為であるかのような印象を与えていること。
(4) 「顧問弁護士やITセキュリティ部門と連携し、事実関係の調査および適切な対処を進めております」「会社として毅然と対応してまいります」として、いわゆる「犯人探し」および組合員に対する不利益処分を強く示唆する文言が含まれていること。
確立した判例および労働委員会命令例によれば、支配介入の不当労働行為が成立するためには、使用者に組合弱体化に向けられた積極的意図までは必要とされず、当該行為が客観的に組合弱体化ないし反組合的な結果を生じ、または生じるおそれの認識・認容があれば足りるとされております(日本アイ・ビー・エム事件・東京高判平成17年2月24日労判892号29頁等参照)。
本件周知の内容、表現、および公表範囲(貴社全社員)に鑑みれば、貴社には、少なくとも当組合の活動を萎縮させ、組合への加入をけん制し、もって組合を弱体化させる結果が生じることの認識・認容があったことは明らかであり、本件周知は労組法第7条第3号の支配介入に該当する不当労働行為と評価せざるを得ません。
なお、労働組合の結成は憲法上の権利であり、当然に上記の法解釈が広く当てはまるものと考えます。
3 組合員に対する名誉毀損的記載
本件周知は、本件結成通知メールの発信者(すなわち当組合員、つまり貴社従業員)の行為を、事実関係を何ら確認することもなく、「メーリングリストの不正利用」「身元不明の不正行為」と断定的に表現いたしました。
これは、組合員個人の社会的評価を貶める内容を貴社全社員に対して摘示・公表したものであり、組合員に対する名誉毀損的言動として、別途、不法行為(民法第709条)を構成しうるものです。
4 内部通報制度・公益通報者保護法の趣旨との抵触
第1で詳述いたしましたとおり、貴社における内部通報の握りつぶし、通報者と疑われた従業員に対する一方的な配置転換等の運用は、公益通報者保護法および同法に基づく指針の趣旨に正面から反する重大な問題です。
貴社が今般、当組合の結成通知に対し、改めて「犯人探し」を示唆する本件周知を発出されたことは、こうした既存の内部通報制度の運用上の問題と一連のものとして連続性をもって発生した事象であり、貴社における労使関係および企業統治のあり方そのものに、極めて深刻な疑念を抱かせるものです。
第3 申入事項
以上の次第により、当組合は、貴社に対し、下記事項を申し入れます。
記
1.本件周知が、労働組合法第7条第3号の支配介入に相当する不当労働行為であることを認め、これを撤回されること。
2.Kintone掲示板上の本件周知を直ちに削除されたうえ、同掲示板において、本件結成通知メールが労働組合の正当な活動に基づくものであった旨、および本件周知が誤った内容を含むものであった旨を訂正・陳謝する文書を、本件周知と同等以上の閲覧条件で掲載されること。
3.当組合および組合員に対し、本件結成通知メールの発信その他正当な組合活動を理由とする一切の不利益取扱い・組合員探索・支配介入を行わないことを、書面にて誓約されること。
4.当組合からの今後の団体交渉申入れに対し、労働組合法第7条第2号に基づき誠実に応諾されることを、書面にて確認されること。
5.本件周知の発出に至った経緯(発案者、決裁者、決裁日時、根拠とした事実認識および法的検討の有無等)を、書面にて開示されること。
第4 回答期限および今後の対応
本書面に対する貴社の回答を、2026年5月22日(金)17時までに、全社員に貴社から周知していただきたく存じます。
期限までに誠実な回答および対応が得られない場合、または貴社の対応が当組合の申入れの趣旨に明らかに反する場合、当組合は、東京都労働委員会に対する不当労働行為救済申立てを含む法的措置(民事上の損害賠償請求、関係官庁および証券取引所等への情報提供を含みます。)を執らざるを得ない可能性があることを、念のため申し添えます。
もっとも、貴社の対応によっては、東証グロース上場企業としてのコーポレートガバナンス上の重大な問題として、関係機関・株主・報道機関等への情報提供を検討せざるを得ない可能性があることも、あわせて申し添えます。
当組合は、繰り返し申し上げますとおり、貴社の持続可能な発展と健全な労使関係の構築を志向する立場から、本件申入れを行うものです。貴社におかれましては、本書面の趣旨を真摯にお受け止めいただき、誠実なご対応を強く要請いたします。
以上
