【ラストワンマイル労働組合】「元役員は逮捕・起訴される」と周辺に広く語るなら、なぜ市場には何も語らないのか

目次

ラストワンマイルに返ってくる「開示ブーメラン」

話は、驚くほど単純である。

「重要ではない」として市場に開示しないのであれば、社内でも重要事件のように語らなければよい。

反対に、

元役員について「ラストワンマイル在任中の行為で逮捕される」「起訴される」などという趣旨の話を、代表取締役自らが幹部らに語っているのであれば、なぜその問題を株主・投資家に対しては“重要ではない情報”として扱えるのか。

今、株式会社ラストワンマイルに返ってきているのは、この極めてシンプルな問いである。

同社ウェブサイトによれば、渡辺誠氏は現在、代表取締役会長兼CEOである。

強制調査の当時は「重要ではない」と判断した。それなら、まだ分かる

過去の時点で、他の役員らが、

「まだ事実関係が分からない」

「元役員個人の問題にすぎない」

「会社の業務や財務には影響しない」

「投資家の投資判断に著しい影響を及ぼすほどではない」

などと判断し、結果として適時開示を行わなかった。

その判断が正しかったかは別として、理屈としては理解できる。

問題は「今」である。

幹部らから当ユニオンに寄せられた情報では、渡辺誠氏自身が、当該元役員について、ラストワンマイル在任中の行為に関係して逮捕・起訴される可能性があるという趣旨の話をしているとされる。

さらに、その刑事事件の起訴状等の内容まで把握しているという趣旨の発言があったとも聞いている。

もちろん、当ユニオンは、その元役員が犯罪を行ったとも、今後逮捕・起訴されるとも断定しない。

そこを決めるのは捜査機関や裁判所であって、渡辺氏でも、当ユニオンでもない。

しかし、ここで別の問題が生まれる。

代表取締役である渡辺氏自身がそこまで具体的に語るほど重要視している問題を、株式会社ラストワンマイルはなぜ市場に対しては重要事項ではないものとして扱えるのか。

これである。

「退任した役員だから関係ない」は、答えにならない

極めて重要なポイントがある。

問題となっているのが、退任後の完全な私生活上の出来事だというのであれば話は別である。

しかし、渡辺氏が語っているとされる内容そのものが、

元役員の「ラストワンマイル在任中の行為」

なのである。

そこが決定的に違う。

元役員が現在会社に在籍しているかどうかと、問題となる行為が会社在任中に行われたかどうかは、まったく別の問題だ。

東証の適時開示制度も、「その人物が今も役員であるか」だけを基準にしているわけではない。

東証は、個別列挙された開示事項以外であっても、

会社の運営、業務、財産または上場株式等に関する重要な事実で、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの

が発生すれば開示を求める。

これが、いわゆるバスケット条項である。

しかも東証は、個別の開示項目に該当しない場合や、軽微基準に該当する場合であっても、バスケット条項への該当性を常に検討する必要があると明示している。

つまり、

「もう辞めた人です」

この一言だけで終わる制度にはなっていない。

問われるのは、

何をしたとされているのか。
いつ行われたのか。
会社業務との関係は何か。
会社自身の取引、会計、税務、内部統制に関係するのか。
そして、その情報が投資家の判断にどの程度影響するのか。

である。

しかも「逮捕・起訴される」とまで語るなら、話はさらに自分に返ってくる

ここからが最大のブーメランである

仮に渡辺氏が、

「単なる昔のトラブルです」

「会社とは関係ありません」

「重要事項ではありません」

と一貫して考えているのであれば、まだ分かる。

ところが、その一方で現役幹部らに、

「元役員が在任中の行為で逮捕される」
「起訴される」
「起訴状の内容まで把握している」

という趣旨の話をしている以上、話が逆になる。

そこまで重大な将来事象として扱っているのは、ほかならぬ経営トップ自身ではないか。

もちろん、代表者が重大だと思っただけで法的な開示義務が自動的に成立するわけではない。

しかし、

会社代表者自身の認識と、会社が市場に対して行った重要性判断との整合性

は当然説明できなければならない。

「社内では逮捕・起訴にまで言及するほど重大だが、市場に対しては投資判断に影響するほど重要ではない」

というのであれば、

その境界線を説明すればよい。

むしろ、それだけの話である。

「逮捕される」と言えば言うほど、「ではなぜ開示しない」が強くなる

これが今回の問題の特殊なところだ。

通常、会社側は開示しなかった理由について、

「重要性が低かった」

と説明することができる。

ところが、自社の代表取締役自身が、元役員について、

逮捕。
起訴。
刑事事件。
在任中の行為。

という極めて重い言葉を使って社内で話題にしているとすれば、その説明は徐々に難しくなる。

なぜなら、

重要ではない人物の、重要ではない出来事を、なぜ代表取締役が現在まで追跡し、起訴内容まで把握し、幹部に語るのか。

という当然の疑問が生じるからである。

元役員を重大事件の関係者として扱えば扱うほど、

その元役員が在任中に何をしていたのかという問題も重大になる。

そして、その在任中の行為が会社業務に関係しているのであれば、

会社は何を知っていたのか。
取締役会は何を把握していたのか。
監査等委員は何を確認したのか。
会計監査人には何を伝えたのか。
適時開示の要否を誰が検討したのか。

という問題にそのまま戻ってくる。

これが渡辺誠氏の仕掛けた「開示ブーメラン」である。

東証ルールは「項目名がないからセーフ」ではない

この点も極めて重要である。

「元役員が刑事事件の対象となった場合」という名前の項目が見当たらない。

だから開示不要。

そんな単純な制度ではない。

東証自身が、個別項目に当てはまらない事実であっても、投資判断への影響が重要ならバスケット条項によって開示が必要となり得ると明確に説明している。

実際、現役役員が訴訟を起こされた場合ですら、東証は「役員だから自動開示」とも「会社自身への訴訟ではないから開示不要」ともしていない。

個別の訴訟項目には該当しなくても、「その他重要な発生事実」として改めて開示要否を検討するよう求めている。

この考え方からすれば、少なくとも、

「退任済みだから検討対象外」

という整理が当然に導かれるわけではない。

むしろ、

元役員の在任中の行為なのか。

会社の事業・会計・税務に関係するのか。

会社自身が調査を受けたのか。

複数の役員や従業員に関係するのか。

会社のガバナンスや内部統制への疑義につながるのか。

投資家が知れば投資判断を変える可能性があるのか。

という実質で判断することになる。

東証自身も、バスケット条項の見落としによる開示漏れが多数発生しているとして注意喚起している。

昔の判断ではなく、「今の判断」を聞いている

ここを誤解してはいけない。

当ユニオンが聞いているのは、

「数年前、なぜ開示しなかったのか」だけではない。

仮に当時、

「大した問題ではない」

として開示しなかったとしてもよい。

しかし、その後に渡辺誠氏が新しい情報を取得して幹部に語っているのであれば、話は変わる。

東証は、「その他重要な発生事実」について、会社がその発生を認識した時点で開示要否を確認する必要があると説明している。

つまり、

昔知らなかったことを、今知った。

あるいは、

昔は重要ではないと思っていたことを、今は代表取締役自身が「逮捕・起訴」という言葉を使うほど重大視している。

のであれば、

今の時点で改めて適時開示の要否を検討するという問題が生じる。

過去に開示しなかったことが、その後永久に開示不要になる免許証ではない。

「元役員の犯罪」を語りたいなら、「会社との関係」まで説明する

最もフェアなのはこれである。

渡辺氏が元役員について、

「犯罪に関係している」

「逮捕される」

「起訴される」

などと考えているのであれば、会社として徹底的に調査すればよい。

そして、本当にラストワンマイル在任中の問題だというのであれば、

会社との関係まで市場に説明する。

逆に、

会社とは無関係である。

投資判断にも影響しない。

会社財務にも内部統制にも関係しない。

他の役員にも関係しない。

そう結論付けたのであれば、

その判断根拠を説明する。

どちらでも構わない。

一番不自然なのは、

元役員を攻撃するときだけ「在任中の重大な刑事事件」として利用し、会社の開示問題になった瞬間だけ「もう辞めた人だから会社とは関係ない」と整理することである。

それでは物差しが二つある。

上場会社のコンプライアンスに必要なのは、人物ごとに変わる物差しではない。

同じ事実に、同じ基準を当てることである。

たった五つ、答えれば終わる

株式会社ラストワンマイルに確認したいことは多くない。

第一。
渡辺誠氏は、当該元役員について、「ラストワンマイル在任中の行為」を理由として逮捕・起訴される可能性があるという趣旨の発言をしましたか。

第二。
その情報を会社は、いつ、どこから取得しましたか。

第三。
その行為は株式会社ラストワンマイルの業務、取引、会計、税務、内部統制その他会社運営と関係していますか。

第四。
現在把握している情報を前提として、東証上場規程402条の「その他重要な発生事実」を含む適時開示の要否を改めて検討しましたか。

第五。
検討した結果、開示不要と判断したのであれば、その理由は何ですか。

今になって、渡辺誠氏が重要視している情報を、開示・報告していない理由は何ですか。

それだけである。

最後は、自分の言葉が自分に返ってくる

元役員を追及するのは自由だ。

法的措置を講じるのも自由だ。

会社が被害を受けたのであれば、徹底的に調査することも当然である。

しかし上場会社の代表者である以上、ひとつだけ忘れてはいけない。

「元役員が在任中の行為で逮捕されるほど重大だ」と語れば語るほど、次に市場から聞かれるのは、

「それほど重大な在任中の問題なら、なぜ会社は開示しないのか」

なのである。

元役員に投げた球は、そこで終わらない。

上場会社では、その球は市場を一周して経営者自身に返ってくる。

これが開示の世界である。

そして今回問われているのは、元役員が善人か悪人かではない。

株式会社ラストワンマイルが、自分たち自身に同じコンプライアンス基準を適用できる会社なのか。

そこだけである。

幹部の多くは、渡辺誠氏の感情的で浅はかな文脈を日常的に見て、マネジメントが全くできない「ワイルドなべちゃん」と評価し、嘲笑している。

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