EY新日本からの交代後に問われる監査の独立性
株式会社ラストワンマイルの幹部・従業員から、会計監査人であるフェイス監査法人の独立性を根本から疑わせる内部情報が寄せられています。
内部情報によれば、株式会社HOTEL STUDIOをめぐる不正会計疑義や請求書改変をフェイス監査法人から指摘された後、渡辺誠氏はラストワンマイルの経営幹部へ、次の趣旨を繰り返し語っていました。
「監査法人から何を指摘されようが、トップの中川氏とは金銭的利害関係を一致させていて、自在に抑え込めるから大丈夫だ」
これは、単に「監査法人と良好な関係を築いている」という話ではありません。
会社の会計処理を監査し、不正があれば経営陣と対峙すべき監査法人について、被監査会社の代表者が「トップを握っている」「指摘されても抑え込める」と説明しているのです。
さらに、内部情報では、HOTEL STUDIOの過去の違法取引について監査法人から複数の指摘を受けた後、調査時に請求書の改変を隠すため、幹部らが関係者へ口裏合わせを指示したとされています。
フェイス監査法人は、一度は不正会計を認識し、IRでの公表と謝罪を求めたにもかかわらず、その後も会社は公表せず、監査証明だけを得ようとしているとの情報も寄せられています。
指摘した監査法人が、途中から黙ったのか。経営陣が監査法人の指摘を無視したのか。代表パートナーとの関係を利用して、現場監査チームの問題提起を押し潰したのか。
どの答えであっても、ラストワンマイルの財務報告とフェイス監査法人の監査品質に直結する問題です。
EY新日本からフェイス監査法人への交代理由は「報酬と事業規模」だった
株式会社ラストワンマイルが2023年10月25日に公表した会計監査人の異動によれば、同社は2023年11月28日付で、EY新日本有限責任監査法人からフェイス監査法人へ会計監査人を変更しました。
会社は、EY新日本について「会計監査が適切かつ妥当に行われることを確保する体制を十分に備えている」と評価しながら、監査費用が増加傾向にあり、翌期以降も増加が見込まれるため、事業規模に適した監査対応と監査報酬の相当性を検討したと説明しています。
そして、新たな視点、機動的な監査、専門性、独立性、監査品質管理体制、実施体制及び監査報酬を総合的に検討し、フェイス監査法人を適任と判断したとしています。
つまり、公式説明上の交代理由は、EY新日本の監査品質に問題があったからではありません。むしろ、十分な体制を持つEY新日本から、監査報酬と事業規模を理由として、フェイス監査法人へ切り替えたという説明です。
日本公認会計士協会の登録情報では、フェイス監査法人は2020年12月設立、代表者は中川俊介氏、2026年8月時点で監査対象となる上場会社は3社とされています。
監査法人の規模だけで、監査品質の優劣が決まるわけではありません。しかし、大手監査法人から設立間もない小規模な監査法人へ交代した後、代表取締役が「トップとは利害関係を一致させていて自在に抑え込める」と幹部へ説明していたのであれば、監査法人交代時に掲げられた「独立性」と「監査品質管理体制」は、改めて検証されなければなりません。
「大幅なダウングレード」と呼ばれる理由は規模ではなく、経営者の発言である
ラストワンマイルの社内では、EY新日本からフェイス監査法人への交代を「監査法人の大幅なダウングレード」と受け止める声があります。
しかし、問題の核心は、監査法人の人数や知名度ではありません。渡辺誠氏が、監査法人を独立した監視者ではなく、「トップを握れば黙らせられる相手」として経営幹部へ説明していたことです。
大手監査法人であっても、経営陣と結託すれば監査は機能しません。小規模監査法人であっても、独立性と職業的懐疑心を貫けば、上場会社の不正を止められます。
したがって問われるべきなのは、会社が監査法人を「安くした」ことだけではなく、その交代後に次のようなことが起きていないかです。
- 経営陣に都合の悪い監査指摘が、代表パートナーとの協議後に弱められた。
- 不正会計の疑義を把握しながら、監査等委員会や市場へ十分に報告しなかった。
- 経営陣が監査資料、取引実態又は関係者供述を整えた後、その説明を受け入れた。
- 関連当事者取引、関係会社間取引、売上の付替え又は請求書分割を十分に検証しなかった。
- 経営者による内部統制の無効化を認識しながら、内部統制監査へ適切に反映しなかった。
- 監査指摘を公表しない会社方針に対し、監査意見、監査報告、辞任その他の対応を取らなかった。
これらが起きていたのであれば、監査法人の交代は単なるコスト削減ではありません。経営者が監査を管理しやすい体制へ切り替えたのではないかという疑問が生じます。
HOTEL STUDIOの不正会計疑義と請求書改変を監査法人はどう処理したのか
ラストワンマイル労働組合は、株式会社HOTEL STUDIOについて、無許可工事、請求書分割、関係会社間取引、株式会社SHIの事業及び人的リソースの承継等を追及してきました。
幹部・従業員から寄せられている内部情報では、HOTEL STUDIOと、実質的に身内とされる関係会社との間で売上を付け合い、売上を二重に計上する処理が繰り返されていたとされています。
さらに、建設業許可を必要とする工事を、500万円未満の請求書へ分割して受注し、違法性を指摘された後には、過去の請求書その他の記録を遡って整える動きがあったとの情報もあります。
内部情報によれば、フェイス監査法人はこれらの処理を問題視し、会社へIRでの公表と謝罪を求めました。しかし、半年以上が経過しても具体的な公表は行われず、経営陣は監査証明を得る方向で処理を進めたとされています。
ここで確認すべきなのは、監査法人が一度指摘したかどうかだけではありません。
- 監査法人が認識した不正会計疑義の具体的内容。
- 問題となった取引、会社、期間、金額及び会計処理。
- 請求書、契約書、工事台帳、仕訳、入出金及び関係会社間残高の検証内容。
- 請求書の改変又は説明統一を監査法人が認識した時期。
- 監査等委員会へ行った報告の内容と日時。
- 会社へ公表又は訂正を求めた記録。
- 会社が応じなかった後、監査法人が講じた追加監査、意見形成及び報告措置。
- 経営者確認書の内容と、その説明を信用した根拠。
監査法人が不正を指摘し、会社が隠し、最後に監査法人が適正意見を出したのであれば、途中で何が変わったのでしょうか。
会計処理が是正されたのか。十分な証拠が提出されたのか。それとも渡辺氏の言うとおり、トップとの「利害関係の一致」によって問題が抑え込まれたのか。
監査調書と監査等委員会への報告記録を確認すれば、答えは明らかになります。
フェイス監査法人の「Quality for Faith」と渡辺誠氏の「抑え込める」は両立しない
フェイス監査法人の代表メッセージでは、中川俊介代表パートナーが「Quality for Faith.」を掲げ、監査品質の維持・向上が何よりも重視される使命であると説明しています。
同法人は、法令と基準への準拠だけにとどまらない「生きた監査品質」、各役職員が責任主体となる組織風土、クライアントと本音で語り合う関係を掲げています。
その理念どおりであるなら、渡辺誠氏が経営幹部へ「トップとは利害関係を一致させ、指摘されても自在に抑え込める」と語っていたことは、フェイス監査法人自身が最も厳しく否定し、調査すべき発言です。
監査法人と被監査会社の経営者が、本音で語り合うことは必要です。しかし、その本音が「不正を公表しない」「指摘を弱める」「監査証明だけ出す」という合意であれば、良好なリレーションシップではありません。
監査の独立性を売却した取引です。
渡辺氏の発言が虚偽であり、中川氏やフェイス監査法人の名前を勝手に使って幹部を黙らせていただけなら、フェイス監査法人は直ちにその事実を公表し、渡辺氏へ訂正を求めるべきです。
発言どおりの関係が存在したのであれば、監査法人自身が調査対象です。
監査法人を黙らせる前提で内部統制を設計した会社に、上場監査の意味はあるのか
株式会社ラストワンマイルは、コーポレート・ガバナンス報告書で、監査等委員会、会計監査人及び内部監査部門が定期的に会合を行い、課題と改善事項を共有していると説明しています。
一方、同じ報告書では、内部監査室の監査計画は渡辺誠氏が承認し、監査結果も渡辺氏へ報告され、リスク・コンプライアンス委員会の委員長も渡辺氏です。
つまり、代表取締役自身の行為を調べるべき内部監査、リスク管理、コンプライアンス、会計監査の各経路に、調査対象となる渡辺氏が強い影響力を持つ構造です。
そのうえ会計監査人のトップまで「自在に抑え込める」と説明していたのであれば、社内の監視機関は次のように並びます。
- 内部監査計画は渡辺誠氏が承認する。
- 内部監査結果は渡辺誠氏へ報告される。
- リスク・コンプライアンス委員会は渡辺誠氏が委員長を務める。
- 不正を通報すると、通報内容より先に通報者が探索される。
- 会計監査人から指摘されても、トップとの関係で抑え込めると代表者が語る。
- 指摘を受けた取引について、請求書改変を隠す口裏合わせが行われたとされる。
この構造で「監査済み」と書かれた決算書を市場へ出しても、それは監査の存在を示すだけで、監査が機能したことの証明にはなりません。
フェイス監査法人とラストワンマイルが直ちに保全すべき記録
- フェイス監査法人の監査調書、監査計画、重要性基準、リスク評価及び監査手続記録。
- HOTEL STUDIO及び関係会社間取引に関する監査証拠、取引一覧、仕訳、請求書及び入出金資料。
- 請求書改変、売上の二重計上、工事分割、関連当事者取引に関する監査指摘一覧。
- 中川俊介氏、吉川嵩悠氏、監査チーム、渡辺誠氏、市川康平氏その他の間のメール、チャット及び面談記録。
- 監査等委員会へ提出した報告書、監査上の主要な検討事項、経営者との意見相違に関する記録。
- 会社へIR公表、訂正又は謝罪を求めた記録。
- 経営者確認書、内部統制評価、関連当事者確認書及び不正リスクに関する質問回答。
- 渡辺氏と中川氏の間における業務、報酬、紹介、投資、貸付、株式その他の利害関係。
- 監査法人交代の選定過程、候補比較、報酬交渉及び独立性確認の記録。
- 本件表面化後の監査調書修正、証拠差替え、説明統一及び関係者への接触記録。
フェイス監査法人・渡辺誠氏・監査等委員会への公開質問
フェイス監査法人・中川俊介氏への公開質問
- 株式会社ラストワンマイル又は株式会社HOTEL STUDIOの不正会計疑義に関する情報提供を受けましたか。
- 請求書の改変、売上の二重計上、関係会社間取引又は工事代金の分割を監査上の問題として認識しましたか。
- 会社へIRでの公表、会計処理の訂正又は謝罪を求めましたか。
- 求めた場合、その内容、対象期間、対象金額及び会社側の回答を明らかにしてください。
- 渡辺誠氏が「トップの中川氏とは利害関係を一致させ、監査法人を自在に抑え込める」と経営幹部へ説明していた事実を把握していますか。
- 渡辺氏との間に、監査報酬以外の業務、紹介、投資、貸付、株式その他の利害関係がありますか。
- 渡辺氏の発言が虚偽である場合、同氏へ訂正及び撤回を求めますか。
- 監査チームによる指摘が、中川氏その他のパートナー判断によって削除又は弱められたことがありますか。
- 経営陣による口裏合わせ、証拠改変又は監査妨害の可能性を監査等委員会へ報告しましたか。
- 監査意見及び内部統制監査意見を形成する際、当該不正疑義をどのように評価しましたか。
- 日本公認会計士協会による独立した品質管理レビュー及び事実確認へ協力しますか。
- 本件に関する監査調書、通信及び証拠を完全に保全していますか。
渡辺誠氏・株式会社ラストワンマイルへの公開質問
- 「監査法人から何を指摘されても、トップの中川氏とは利害関係を一致させていて自在に抑え込める」と発言しましたか。
- 発言した場合、「利害関係を一致させている」とは、具体的に何を指しますか。
- フェイス監査法人又は中川氏へ、監査指摘の削除、表現変更、公表回避又は監査証明の発行を求めましたか。
- HOTEL STUDIOの不正会計疑義について、フェイス監査法人からどのような指摘を受けましたか。
- 監査法人から公表又は謝罪を求められながら、具体的な開示を行わなかった事実がありますか。
- 請求書改変を隠すため、関係者へ説明や供述を合わせるよう指示しましたか。
- EY新日本からフェイス監査法人への変更について、渡辺氏は候補選定、報酬交渉又は監査役会の判断へ関与しましたか。
- フェイス監査法人との間に、監査以外の取引、紹介、投資その他の経済的関係がありますか。
- 本件を東京証券取引所、金融庁、日本公認会計士協会、会計監査人及び筆頭株主へ報告しますか。
- 渡辺氏を調査から外した独立した第三者調査を受け入れますか。
監査等委員会への公開質問
- フェイス監査法人からHOTEL STUDIOその他の不正会計疑義について報告を受けましたか。
- 渡辺誠氏が監査法人トップを「自在に抑え込める」と発言した事実を把握していますか。
- 会計監査人の独立性を再評価しましたか。
- 監査法人の選任及び報酬決定過程における渡辺氏の影響を調査しましたか。
- 監査法人と経営陣との意見相違、未修正の監査差異及び監査妨害の有無を確認しましたか。
- 独立した別の監査法人又は会計専門家による再検証を実施しますか。
- 本件を東京証券取引所、金融庁、日本公認会計士協会及び株主へ報告しますか。
- 監査等委員としての監督責任と、会計監査人の再選任の是非を審議しますか。
ラストワンマイル労働組合が求める措置
- フェイス監査法人は、本件に関する全ての監査調書、通信、面談記録及び監査証拠を直ちに保全すること。
- 中川俊介氏及び既存の監査チームから独立したパートナーによる再審査を実施すること。
- 日本公認会計士協会は、フェイス監査法人の独立性、品質管理及び本件監査の実施状況を確認すること。
- 株式会社ラストワンマイルは、渡辺誠氏を本件調査、証拠管理、監査法人との協議及び開示判断から外すこと。
- HOTEL STUDIO及び関連会社間取引について、独立した会計専門家によるフォレンジック調査を実施すること。
- 監査指摘、未修正事項、会社側の回答及び開示を行わなかった理由を市場へ公表すること。
- 過年度の財務諸表、内部統制報告書及び関連当事者開示を再検証すること。
- 経営陣による監査妨害又は証拠改変が確認された場合、東京証券取引所、金融庁及び捜査機関へ報告すること。
- 不正を指摘した従業員、監査担当者及び調査協力者への報復を禁止すること。
- 調査結果、訂正額、監査責任、役員責任及び再発防止策を、株主、従業員及び市場へ具体的に公表すること。
監査法人は経営者が押す消音ボタンではない
EY新日本からフェイス監査法人へ交代したこと自体が、不正を証明するわけではありません。
しかし、交代後に不正会計疑義が指摘され、会社側で請求書改変を隠す口裏合わせが行われ、代表取締役が「トップを握っているから抑え込める」と幹部へ説明していたのであれば、監査法人の独立性は正面から検証されなければなりません。
渡辺氏の発言が虚偽なら、フェイス監査法人は自らの信用を守るために否定すべきです。発言が事実なら、中川俊介氏とフェイス監査法人は、監査対象会社とともに説明責任を負います。
監査法人は、経営者が都合の悪い指摘を消すために押す消音ボタンではありません。
会社が音を消そうとしたときに、株主と市場へ警報を鳴らすのが会計監査人です。
「Quality for Faith.」を掲げるのであれば、その品質と信頼を、広告文ではなく、本件の監査調書、独立性、対応結果によって証明してください。
