重大な事態が起こると経営者が具体的に語っているのであれば、その会社は何の準備をしているのでしょうか。誰が事実を確認し、誰が市場へ説明し、誰が従業員と取引先へ対応するのか。見通しを説明するだけでは、危機管理の計画にはなりません。
当組合が幹部から把握しているのは、渡辺誠氏が元役員の逮捕・起訴に関する見通しを周囲へ語っているという情報です。今回問うのは、その説明を行う現在の経営者と、取締役会・監査等委員会が、自社に関係する事実が確認された場合の対応をどこまで準備しているかです。
プルデンシャルは、元社員の逮捕時に会社が把握した内容を示しました
過去の具体例として、プルデンシャル生命は、2024年9月12日付の「弊社元社員の逮捕について」で、同月9日の元社員の逮捕を公表しています。会社が把握した行為や被害状況、担当していた契約者への確認、警察への情報提供、再発防止及び相談先を説明しています。
この公表は、会社が刑事裁判の判断を代行するものではなく、会社自身が把握し対応している事項を示すものでした。元社員という肩書を付けて距離を置くだけではなく、顧客との関係と会社の対応を説明した点が、初動を考える材料になります。
「ラストワンマイルの元役員」と報じられた場合、何を説明するのですか
仮に、渡辺氏が語るような刑事手続の進展が実際に確認され、報道にラストワンマイルの元役員や上場実務担当者という経歴が登場した場合、会社には、在任中の職務や会社取引との関係について質問が寄せられることが考えられます。
そのときに、対象者が既に退任しているという説明だけで足りるかどうかは、事実関係次第です。在任中の行為を渡辺氏自身が問題としているのであれば、当時の指示、決裁、会計処理、上場審査への説明を、会社として確認する必要があります。
新しい事実が確認された際には、渡辺氏が以前説明していた内容と一致する部分、異なる部分も整理してください。会社としての説明は、経営者の予測が当たったことを示すためではなく、会社との関係を正確に伝えるために行うものです。
初動で必要なのは、事実確認と業務を守る担当者です
JPXが示す開示の適正性の確認事項には、時期の適切さ、虚偽の有無、重要な情報の欠落、投資判断上の誤解を生じさせないことが含まれます。必要な開示を急ぐと同時に、確かめていない話を混ぜない体制が必要です。
会社は、刑事手続の対象、確認された行為、会社との関係を整理し、調査中の事項と分けて説明する準備を進めてください。現経営陣自身の関与が検証対象となる場合には、その人物だけが情報を選別し、説明内容を決める状態を避ける必要があります。
- 事実確認と記録保全を担当し、必要な資料へアクセスする責任者。
- 監査等委員会、会計監査人、東証への連絡と、開示判断を担当する責任者。
- 従業員、取引先、顧客からの問い合わせと、業務継続を担当する責任者。
また、JPXは、未公表情報の適切な管理と役職員による規制の理解を重視しています。重要な情報を把握した場合には、共有範囲や売買管理の要否を担当部署が確認し、幹部間で見通しだけが広がる状態にしないでください。
渡辺誠氏と取締役会・監査等委員会への公開質問
- 渡辺氏が語る刑事手続の見通しについて、会社が確認している事実と同氏の評価を区別していますか。その根拠を監査等委員会へ共有していますか。
- 会社関係者に関する新たな刑事手続が確認された場合、事実確認、業務継続、従業員対応、東証への相談及び開示を誰が担当しますか。
- 過去の会社説明と新たな事実に相違が生じた場合、訂正・追加説明を行う判断経路は決まっていますか。現経営陣の関与も同じ基準で確認しますか。
- 捜査・裁判の進展により当初の見方が変わった場合や、嫌疑を否定する事情が明らかになった場合にも、必要な訂正・更新を行う方針ですか。
当組合は、予測ではなく実際に動く対応計画を求めます
- 現在把握している事実だけでも会社への影響と開示の必要性を検討し、将来の刑事手続を待つことだけを対応方針としないでください。
- 新たな事実が確認された場合に備え、独立した確認経路、資料保全、業務の代替及び従業員・取引先への説明体制を整えてください。
- 開示と社内説明を一度で終えず、その後の確認結果に応じて更新し、当初の説明に誤りがあれば速やかに是正してください。
「予想どおりでした」は、会社の初動報告になりません
組合員の皆さまには、刑事手続に関する情報を受けた際、会社の正式な説明、報道、個人の見通しを区別して確認していただきたいと思います。会社業務との関係について事情を知る方は、自分が直接関わった事実と、後から聞いた説明を分けて記録してください。
渡辺氏が重大な展開を見通しているというのであれば、会社の準備も具体的に示せるはずです。その日に用意されているのが「私の言ったとおりでした」という一言だけでは困ります。必要なのは予測の的中報告ではなく、会社の事実確認、必要な開示、そして働く人と取引を守る対応です。
