元社員が逮捕されたと報じられた会社と、元役員が逮捕・起訴されるという見通しを経営者が周囲へ語っている会社。両者を比べるときに重要なのは、肩書に「元」が付くかどうかではありません。その人物の行為と会社との関係を、会社自身がどこまで調べ、何を説明しているかです。
ラストワンマイルの幹部からは、渡辺誠氏が、元役員の在任中の行為を問題視し、今後の刑事手続について具体的に語っているとの情報が寄せられています。それほど重大な情報だというのであれば、必要な事実確認と開示判断を急ぐべきです。周囲への説明だけが詳しくなり、会社としての説明が追い付かない状態でよいのでしょうか。
元社員の逮捕報道と、会社が公表してきた対応
2026年9月24日の日テレNEWS NNNの報道では、プルデンシャル生命の元社員が、副業支援を装った暗号資産の詐取に関する容疑で逮捕されたと伝えられています。報道には、以前の同僚をその後グループへ勧誘したとみられるとの内容もあります。
この個別事件の報道とは別に、プルデンシャル生命は、既に2026年1月16日付の公表資料で、営業社員・元営業社員による金銭不祥事を説明しています。自社の保険業務に直接関連しない金銭行為についても、社会的責任を踏まえ、退職後の行為を含めて公表する姿勢を示しています。
ここで比較すべきなのは、事件の人数や金額を競うことではありません。退職した人物の行為であっても、会社の信用や顧客との関係を調べ、説明の対象としている点です。過去の所属を消すだけで、会社が確認すべき事実まで消えるわけではありません。
渡辺誠氏が問題にしているのは「在任中」ではありませんか
当組合へ寄せられた幹部からの情報では、渡辺氏は、元役員について、ラストワンマイルに在任していた時期の行為を問題にしています。起訴状に関する情報や今後の刑事手続の見通しも含め、周囲へ具体的に説明しているということです。
会社がまず確認すべきなのは、その説明が何を根拠とし、問題とする取引や行為に会社の職務、肩書、情報、人員、資金がどう関係しているかです。会社との関係を調べた結果として個人の行為と判断することと、調べる前から個人の問題として扱うことは、順序が逆です。
仮に渡辺氏の説明を会社として採用しているのであれば、会社の過去の取引、監督体制、上場審査への説明にも確認範囲を広げる必要があります。採用していないのであれば、なぜ経営者が幹部へ重大な事実として説明したのか、その根拠と伝え方を検証すべきです。
逮捕の予測より先に、会社が把握した重要事実を整理してください
東証の上場規程第402条第2号xは、会社の運営、業務、財産等に関する重要な事実のうち、投資判断に著しい影響を及ぼすものについて開示を求めています。東証の公式説明でも、重要性を実質的に判断し、該当する場合は直ちに開示することが求められています。
したがって、必要な開示を行うべき時点は、渡辺氏の予測する逮捕の日とは限りません。会社に関係する重要な事実を既に把握しているのであれば、その内容に基づいて判断する必要があります。反対に、見通しの根拠が確認できないのであれば、予測を確定事項のように広める扱いを見直すべきです。
当組合が求めるのは、未確認情報をそのまま市場へ流すことではなく、確認された事実、調査中の事項、会社への影響、今後の確認方法を整理した説明です。「知っている」と幹部へ語ることと、「確認した」と会社名義で説明することの間を、取締役会と監査等委員会は埋めてください。
渡辺誠氏と取締役会・監査等委員会への公開質問
- 渡辺氏が幹部へ説明した元役員の行為について、対象となる時期、職務及び取引を、会社として特定しましたか。何を根拠に会社との関係を判断しましたか。
- 渡辺氏、取締役会、監査等委員会及び会計監査人が、それぞれ情報を把握した時期と内容を説明できますか。
- 東証への相談及び適時開示の要否について、誰が、いつ、どの資料に基づいて判断しましたか。公表済みの事項があれば、その資料と今回の説明との対応関係を示してください。
- 渡辺氏の説明を会社として採用していない部分がある場合、幹部への説明を訂正し、情報の共有方法を是正する予定はありますか。
当組合は、公表範囲と判断記録の提示を求めます
- 元役員の在任中の行為と会社との関係を、原資料に基づいて調査し、現在の経営陣の関与も同じ範囲で確認してください。
- 開示の必要性を直ちに検討し、必要な事項を適時に公表してください。調査が続く場合も、確認済みの内容と今後の説明予定を整理してください。
- 会社が説明している事実と、経営者が幹部等へ説明している内容の食い違いを点検し、誤りや根拠を欠く断定があれば是正してください。
退職後まで説明する会社を、他人事として眺めている場合ではありません
プルデンシャル生命の公表を見て問われるのは、ラストワンマイルが同じ業種かどうかではなく、自社に関係する問題をどこまで引き受けて調べるかです。在任中の事件だと渡辺氏自身が語るのであれば、その言葉は会社の過去の監督と現在の判断にも向けられます。
当時の業務指示や取引、会社への報告について事情を知る方は、適法に保有する記録を、日付と経緯が分かる状態で残してください。周囲への予告編ばかり充実させず、会社名義の説明を示していただきたいと思います。渡辺氏に必要なのは、次の逮捕予測ではなく、今の開示判断です。
