伊藤美和氏による「股間凝視」が問う、5年前の退職と会社の責任
伊藤美和氏によるセクシュアルハラスメントを取り上げた最新記事の公開後、ラストワンマイル労働組合には、組合員からの問い合わせが殺到しています。その中には、自分も股間を凝視されたという具体的な被害申告が複数含まれています。一人が声を上げたことで、別の組合員からも同様の経験が語られ始めています。
組合員の間では、伊藤氏が最も力を入れているYouTubeのゴルフチャンネルにちなみ、本件を「atashinoコカン事件」と呼び、真剣な議論が交わされています。議論の中心にあるのは、身体を性的な視線にさらされず、嫌なことを嫌だと伝えても不利益を受けず、安心して働き続けられる会社にするために、何を変える必要があるかという問題です。
さらに、福岡のシステムチームで働いていた組合員からは、股間を凝視されたことを指摘してから会社での嫌がらせが続き、5年前に退職せざるを得なくなったという相談も寄せられています。当組合は、この相談についても、別途具体的な請求を進める予定です。現在の職場を守ることと、既に職場を離れざるを得なかった人の被害回復を求めることを、並行して進めます。

最新記事から広がった「自分も凝視された」という申告
10月5日に公表した記事では、在職する組合員からの申告として、伊藤氏による股間への執拗な視線、面談中の二人きりのゴルフへの誘い、拒絶後の異動や担当変更を取り上げました。当組合は、性的な言動だけを切り出すのではなく、面談、懲戒、退職勧奨などの人事対応と併せて検証するよう、会社に要求しています。
今回、その記事を受けて複数の組合員から同様の被害申告が寄せられたことで、会社が確認すべき範囲は広がりました。現在の一人への対応だけでなく、異なる時期や職場で何が行われていたのか、会社が過去に問題を把握する機会はなかったのかまで調べる必要があります。
問い合わせの多さと、具体的な被害申告の数は、それぞれ整理して扱います。そのうえで、複数の本人から同じ種類の行為が申告されていることには、調査範囲を広げる明確な意味があります。本人ごとの経験を個別に聞き、共通する行為、異なる事情、拒否や指摘に対する対応を照合することが必要です。
会社が向き合うべきなのは、記事が話題になったことへの対策よりも、記事をきっかけに表れた被害です。広報上の火消しに取り組む前に、なぜ同じ内容の申告が複数の労働者から出てくるのかを確認してください。記事の見え方を整えても、職場で起きたことは変わりません。
福岡の元システムチーム組合員から、5年前の退職につながる相談が届いています
今回、新たに具体的な相談を寄せたのは、福岡のシステムチームで働いていた組合員です。この組合員は、伊藤氏より自分の方が一回り年上であったにもかかわらず、股間を凝視されたと説明しています。
本人の相談によれば、その行為を指摘した後、会社での嫌がらせが続くようになり、その結果、5年前に退職せざるを得ない状況へ追い込まれたとのことです。身体への視線に不快感を覚えたという話にとどまらず、拒否や指摘をした後の職場での扱いと、雇用を失うに至った経過まで含む相談です。
この申告が会社へ突き付けているのは、伊藤氏が何をしたのかという問いと、それを指摘した人に対して会社の中で何が起きたのかという問いです。嫌がらせを行った人物、指示や承認の有無、当時の上司や人事担当者が把握していたこと、退職へ至るまでに会社が行った対応を、連続した経過として調べる必要があります。
当時の役職や指揮命令関係も確認対象です。現在の肩書をそのまま過去へ当てはめるのではなく、当時、誰が本人の仕事や評価に影響を与えられ、誰が嫌がらせを止められる立場にあったのかを明らかにしてください。会社として知っていたことと、知る機会があったのに確認しなかったことの両方が問われます。
退職届が提出されているとしても、その一枚だけでは、なぜ本人が退職を選ばざるを得なくなったのかは分かりません。働き続けることが困難になる扱いが続いたという相談に対し、退職という手続の結果だけを示して説明を終えることはできません。退職に至るまでの職場を確認する必要があります。
当組合は、この組合員の相談について、被害の経過、会社側の対応、退職による影響を整理し、別途具体的な請求を進める予定です。5年前に会社を離れたことで、その人が経験した出来事まで会社の歴史から削除されるわけではありません。現在の改善と併せて、過去の被害にも向き合うよう求めます。
性的な視線で職場を害し、指摘した人の立場まで悪くする二重の問題です
身体の性的な部位へ執拗な視線を向けられることは、仕事に集中する環境や、職場で保たれるべき尊厳に関わります。相手と会うたびに身体を見られることを警戒しなければならないのであれば、面談や通常の接触も、安心して仕事を進める機会ではなくなってしまいます。
旭川医科大学のハラスメント防止資料は、セクシュアルハラスメントになり得る性的な行動として、「身体を執拗に眺め回すこと」を挙げています。調査で確認するべきなのは、どの場面で、どこへ、どの程度の時間や頻度で視線が向けられ、相手の拒否や不快感にどう対応したかです。
今回の福岡の組合員の相談には、その行為を指摘した後、会社での嫌がらせが続いたという、もう一段の問題があります。性的な言動によって就業環境が害されることと、それへの拒否・抗議によって仕事上の不利益を受けることを、別々に確認しながら、つながる経過として検証しなければなりません。
厚生労働省の説明でも、性的な言動によって就業環境が害される「環境型」と、その言動への対応によって不利益を受ける「対価型」のセクシュアルハラスメントが示されています。今回問うべきなのは、視線への申告を受け付けるかどうかだけでなく、指摘後の扱いが、本人を黙らせたり職場から離れさせたりする方向に働いたのかという点です。
男女雇用機会均等法第11条第2項は、会社への相談や、その確認への協力について、次のように定めています。
事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
会社への相談だけでなく、行為者本人への拒絶に対する不利益があれば、その拒絶と会社の対応との関係を調べる必要があります。誰に何を指摘したのか、その情報が社内の誰へ伝わり、その後にどの判断がされたのか。出来事を順番に並べ、指示と決裁の記録を確認してください。
被害を訴える前より、訴えた後の方が働きにくくなる。それが起きていたのであれば、会社の相談制度は、安心を取り戻す仕組みとして機能していません。問題を伝えた人の職歴が先に終わり、問題の検証だけがいつまでも始まらないという順序を、当組合は認めません。
年齢や性別ではなく、拒否した後も安心して働けるかが基準です
福岡の組合員が、伊藤氏より自分の方が一回り年上だったと説明していることにも、耳を傾ける必要があります。年齢が高い側なら不快感を持たない、言い返せる、職場での不利益を受けないということにはなりません。年齢の上下と、会社で仕事や処遇に影響を及ぼせる関係は、別のものです。
厚生労働省は、男性も女性もセクシュアルハラスメントの行為者にも被害者にもなり得ると説明しています。被害を訴えた人が男性であることや、相手が女性であることによって、会社が申告の重みを変える理由はありません。誰であっても、自分の身体を性的な関心の対象として扱われることに、拒否を示すことができます。
「年上なのだから受け流せたはず」「その程度なら気にしなければよい」といった見方を調査に持ち込むのであれば、本人が経験した事実を聞く前に、会社側の都合のよい人物像を作ることになります。必要なのは、本人がどう対応し、その後に実際に何が起きたかを確認することです。
また、拒絶を明確に言葉にできた人だけが保護される職場であっても困ります。立場の違いや、断った後の影響を恐れて、すぐに言葉にできない人もいます。会社には、申告の方法や時期だけで扱いを決めず、当時の力関係と本人の状況を含めて聞き取ることを求めます。
今回、明確に指摘した後に嫌がらせが続いたという相談が届いていることは、現在働く人にも関わります。声を上げた人がどう扱われたかは、次に声を上げようとする人が見ています。会社が示すべきなのは、勇気を出して訴えた人にさらに勇気を要求する姿勢ではなく、訴えた後も働けるという実際の対応です。
人事に関わる伊藤美和氏の申告を、伊藤氏側だけで処理させないでください
会社の公式役員紹介では、伊藤美和氏は取締役執行役員として掲載されています。最新記事でも、伊藤氏が従業員への面談や退職勧奨に直接関わっていた経過を取り上げました。ハラスメント申告の対象となった人物が、人事上の対応にも関わっているという構造は、調査体制を考えるうえで重要です。
本人の説明を聞くことは必要です。しかし、本人が説明し、本人の指揮下にある者が確認し、本人に報告して調査を終了するのであれば、相談した側が安心して事実を話せるでしょうか。調査担当者の所属部署名を変えるだけでなく、誰から指示を受け、誰の承認で結論を出すかまで確認しなければなりません。
当組合は以前、「会長室管掌取締役」という伊藤氏の担当と、会社の利益を守る職務の関係を問いました。今回も、渡辺誠氏に近い立場かどうかで扱いを変えず、伊藤氏自身の行為と、周囲の役職員による対応を検証するよう求めます。会社の中枢に近い役員ほど調べにくいのであれば、それこそ監査等委員会と社外取締役が動くべき場面です。
JPXの不祥事対応のプリンシプルは、必要十分な調査範囲と適切な調査体制を求め、独立役員による自浄作用の発揮を重視しています。今回なら、性的な言動だけでなく、申告後の人事、過去の相談処理、退職に至った経緯を対象に含める必要があります。
会社には、伊藤氏や当時の人事対応に関与した者から独立した担当者を選び、双方から個別に説明を聞き、関係者や記録と照合する体制を求めます。申告者に繰り返し同じ被害を説明させる一方、役員の回答は一度で採用するという調査にはしないでください。取締役という肩書は、申告を受けたときの優先通過券ではありません。
5年前の退職を、会社の人材流出と相談制度の問題として調べてください
今回の相談は、本人の尊厳と雇用に関する問題であると同時に、会社が働く人を失った経緯を問うものです。システムチームで仕事をしていた人が、性的な視線を指摘した後の嫌がらせで退職を余儀なくされたと訴えているのであれば、なぜ仕事を続けられる環境を確保できなかったかを調べる必要があります。
持続可能な成長を語る会社にとって、従業員が経験や知識を積み重ね、安心して力を発揮できることは土台です。仕事と無関係な苦痛を耐えることが在職の条件になれば、会社は能力を評価して人を残しているのか、異議を述べない人だけを残しているのかという問題に直面します。
会社は、過去の相談件数と処理結果、相談後の異動・評価・面談、退職に至った人の経緯を確認してください。相談が記録にない場合も、相談窓口が知られていたか、安心して使える状態だったか、管理職へ伝えた内容が正式に記録されなかったのかを確認する必要があります。記録が見当たらないという結果と、会社に問題がなかったという結論は同じではありません。
現在、複数の申告が組合へ届いていることも、会社の把握方法を点検する材料です。なぜ社内ではなく組合の記事をきっかけに経験が語られているのか。今まで相談できなかった事情があるなら、その事情を生んだ職場を改善しなければ、窓口を増やしても同じことが続きます。
会社が減らすべきなのは、問題を訴える従業員の数ではなく、被害と報復です。相談者が退職して社内の苦情が聞こえなくなっても、それを職場改善の成果にはできません。人数表の上では一人減っただけでも、その背後に何があったかを確認するのが、人を管理する立場の仕事です。
別途の具体的な請求と、現在働く組合員の保護を進めます
当組合は、福岡の元システムチーム組合員から寄せられた相談について、本人とともに経過と被害を整理し、別途具体的な請求を進める予定です。行為を受けた際の苦痛だけでなく、その後の嫌がらせ、退職までの経緯、生活と職業上の影響を含めて、請求の対象と内容を具体化します。
その際には、行為をした者の責任と、相談を受けた会社、嫌がらせを行った者、指示や判断に関与した者の責任を、それぞれ整理します。誰がどの行為によって、どの被害を生じさせたかを明らかにし、適用される法的根拠や請求期間も確認して進めます。会社に求める独立調査と、本人の権利を回復するための請求を、一方の結論待ちにしません。
現在働いている組合員については、望まない接触や面談を避ける方法、安心して連絡できる経路、本人の意向を踏まえた業務上の配慮を求めます。接触を減らすための対応が必要であっても、相談した側だけに賃金や職務上の不利益を負わせる方法にならないよう、条件を明確にしてください。
厚生労働省の均等法Q&Aには、セクハラを相談した後、トラブルメーカーとして扱われ、退職せざるを得なかったという相談も掲載されています。同省は、不利益取扱いの禁止、労働局による是正指導、紛争解決援助や調停の利用を案内しています。会社内部の対応だけで解決できない問題には、外部の手続も用いて向き合えます。
会社には、調査や請求に必要な在籍、業務、評価、面談、異動、退職関係の資料を保存し、本人に関する資料の提供へ適切に対応するよう求めます。退職した人の記録を探す仕事より、退職した人だから関係ないという説明を作る仕事を優先しないでください。本人は職場を離れていても、その退職を生んだ会社の対応は検証できます。
伊藤美和氏・渡辺誠氏・取締役会・監査等委員会への公開質問
ラストワンマイル労働組合は、複数の被害申告と、5年前の退職に至る相談を受け、次の事項への回答を求めます。本人の説明と会社の確認結果を分け、事実認定、判断者、確認した記録及び是正措置を示してください。
- 伊藤氏は、複数の組合員から、股間を凝視されたとの申告が寄せられていることについて、どのように回答しますか。本人に確認した内容と、会社が個別に確認した事実を区別して示してください。
- 福岡のシステムチームで働いていた組合員が、行為を指摘した後の嫌がらせによって5年前に退職を余儀なくされたと訴えていることについて、会社はどの範囲を調査しますか。当時の指揮命令、人事権限、相談の有無及び退職に至る対応を確認しますか。
- 伊藤氏の言動に関する申告や指摘を、渡辺氏、当時の管理職、人事担当者、監査機関は、いつ、どの範囲で把握しましたか。報告・調査・指導を行った場合、その内容と結果を示してください。
- 被害申告の対象者や、指摘後の人事対応に関与した者を、調査方針と結論の決定から独立させていますか。調査責任者の選任理由、指示系統、資料へのアクセス及び報告先を説明してください。
- 性的な言動への拒否や相談の前後で、本人の評価、担当業務、面談、処遇にどのような変化がありましたか。変更を提案・承認した者、業務上の理由及びその裏付けを確認しますか。
- 同様の行為に関する過去の相談と、相談後に退職した人の経緯を調べますか。在職者だけでなく、退職者も安心して事実を伝えられる確認経路を確保しますか。
- 相談者や調査協力者に対する不利益取扱いを防ぐため、現在どの措置を講じていますか。相談の撤回や直接対面を迫ることなく、本人の意向と健康に配慮した対応を行いますか。
- 行為や会社対応の問題が確認された場合、役員に対する措置、被害者の不利益の回復、個別の請求への対応、再発防止を誰が決定しますか。調査と改善の進捗を、個人情報に配慮して説明する予定を示してください。
当組合が求めるのは、被害を訴えた人を辞めさせない会社への改善です
会社は、今回の問題を伊藤氏と一人の従業員との相性の問題へ縮めず、複数の申告と過去の退職を含む案件として扱ってください。行為の確認、報復の防止、被害回復、会社の監督機能の改善を、それぞれ担当者と実施内容が分かる形で進めるよう求めます。
- 伊藤氏及び関係する人事判断に関与した者から独立した調査体制を設け、複数の申告と過去の退職について、本人ごとの経過を個別に確認してください。
- 相談したことや調査へ協力したことを理由とする不利益取扱いを防ぎ、必要な接触回避と就業上の配慮を、本人に一方的な負担を負わせない方法で実施してください。
- 面談、評価、業務指示、相談処理、異動及び退職に関する記録を保全し、保存期間の経過やアカウントの停止などで失われないよう対応してください。
- 被害者の意向を踏まえて、不利益の回復と個別の請求に対応してください。行為者への措置だけで終わらせず、会社の対応によって広がった被害も検証してください。
- 役員を含む全ての関係者に、性的な言動の防止、拒否の尊重、相談者保護を徹底してください。研修の実施回数だけでなく、相談後に不利益が生じていないかという運用結果を確認してください。
同様の経験がある方は、自分が直接経験した行為、その日時と場所、指摘した内容、その後の仕事上の変化、相談と会社の回答を、分かる範囲で整理してください。記憶が曖昧な部分を無理に埋めたり、他人の経験に合わせたりする必要はありません。本人の経験と、当時残された連絡や人事の記録を一緒に確認することが重要です。
当組合への相談に加え、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にも相談できます。厚労省の案内では匿名の相談にも対応しており、本人の了承なく名前を明らかにして会社へ相談内容を知らせることはしないとされています。社内で声を上げにくい人も、自分の状況に合う経路から相談を始められます。
「atashinoコカン事件」を、働く人が尊厳を取り戻す転機にします
組合員の間で広がっている「atashinoコカン事件」という呼び名の背後には、複数の被害申告と、会社を辞めざるを得なかった人の具体的な経験があります。その議論が向かう先は、伊藤氏のYouTube活動の話題性ではなく、自分たちが働く会社を、安心して働き続けられる場所へ変えることです。
ゴルフのスコアを改善することに熱心であるなら、会社の中で繰り返し指摘される問題についても、原因を確認し、対応を改めていただきたいと思います。動画の見栄えを整えることと、職場の実態を整えることは、別々の仕事です。取締役として先に説明すべきなのは、なぜ複数の労働者が同様の被害を訴え、指摘後に退職へ至ったという相談まで寄せられているのかという点です。
当組合が目指しているのは、ラストワンマイルの持続可能な成長と健全な存続、そして労働者の雇用、生活、健康、尊厳と福祉です。会社を大切に思うからこそ、被害を訴えた人が先に職場を離れ、問題のある対応が検証されずに残る構造を変える必要があります。
伊藤美和氏には、ご自身に向けられた具体的な申告へ回答していただきたいと思います。渡辺誠氏、取締役会、監査等委員会には、現在の被害を止めることと、5年前の退職に至る経過を調べること、その双方を求めます。会社が守るべきなのは、役員の体面だけではありません。
持続可能な成長の出発点は、嫌なことを嫌だと伝えた人が、それを理由に仕事を失わずに済むことです。会社から退場させるべきなのは、被害を訴えた労働者ではなく、ハラスメントと、それを指摘した人への報復です。
