元役員に重大な問題があると説明する経営者は、その元役員だけを調べればよいのでしょうか。誰が仕事を任せ、誰が取引を承認し、誰が問題を把握していたかまで調べなければ、会社としての説明にはなりません。
プルデンシャル生命が公表した独立調査の目的には、過去の経営陣が果たした役割まで含まれています。ラストワンマイルの元役員について具体的な説明を続けているという渡辺誠氏にも、同じ問いを向けます。調査する側に立つだけでなく、調査される側にも立つ準備はありますか。
プルデンシャルが掲げたのは、社員だけで終わらない調査です
プルデンシャル生命は、2026年2月10日付の発表で、会社から独立した外部専門家による調査委員会の設置を公表しました。社内調査の検証、事実関係、原因分析、再発防止に加え、過去を含む経営陣の役割に関する検討を、調査目的へ明記しています。
注目すべきなのは、委員会という看板よりも、その調査範囲です。不適切な行為をした社員だけでなく、会社がなぜ防げず、経営陣が何をしてきたかまで調べるという構成です。調査の実効性は結果によって検証されますが、少なくとも経営陣を最初から対象外にする設計ではありません。
馬見塚メモの取引図は、元役員だけを指していません
当組合がこれまで取り上げてきた馬見塚メモには、ラストワンマイル、渡辺氏、関係法人や取引を結び付ける記載があります。中野爵喜氏や齊藤悟志氏の関与を含め、会社周辺で何が行われていたかを検証するうえで、具体的な確認対象を示す資料です。
名前の多さは犯罪の証明ではありません。しかし、図に記された資金移動を、契約、請求、送金、会計処理と突き合わせることはできます。必要なのは、気に入らない人物の名前だけを抜き出す作業ではなく、一つの取引について関係者全員の役割を確認する作業です。
当組合に寄せられた幹部からの情報では、渡辺氏は、元役員の犯罪の嫌疑や、今後の刑事手続について具体的に説明しています。その説明の根拠が会社の職務や取引にも関わるのであれば、渡辺氏自身の紹介、指示、承認、報告の扱いも確認されなければなりません。
同じ取引を、関係者によって違う基準で調べないでください
実務担当者が資料を作成し、経営者が承認し、別の人物が資金を受け取る取引であれば、作成者だけを調べても全体は分かりません。元役員の行為を問題にするなら、その仕事が誰の依頼で始まり、どの決裁を経て、誰の利益につながったかを確認する必要があります。
反対に、現在の経営陣に関係する取引であることを理由に、確認の範囲を狭めてはなりません。元役員には通信記録を求め、現経営陣には口頭説明だけで済ませるような調査では、同じ事実を同じ基準で検証したことになりません。
監査等委員会が示すべきなのは、誰を調べるかという名簿だけでなく、何を基準に対象を選び、どの資料へアクセスし、どこまで調査を広げられるかです。調査対象者が、自分に関係する資料の提出範囲まで決められる仕組みになっていないかも、説明していただきたいと思います。
渡辺誠氏と監査等委員会への公開質問
- 馬見塚メモのうち、どの会社取引を調査対象としましたか。渡辺氏、中野氏、齊藤氏その他の関係者について、役割を同じ資料で照合していますか。
- 調査の対象期間、対象者及び対象資料を決める権限は誰にありますか。渡辺氏に関係する事項を調査範囲から外した場合、その理由を誰が審査しますか。
- 調査担当者は、関係者の承認を経ずに必要な会社資料へアクセスし、役職員から個別に説明を聞けますか。資料提出を拒まれた場合の対応は決まっていますか。
- 元役員に対する渡辺氏の説明と、調査によって確認された事実が異なる場合、その相違も調査結果として報告・公表する方針ですか。
当組合は、現経営陣を含む独立した検証を求めます
- 取引、指示、承認、資金の帰属を軸に調査範囲を定め、元役員だけでなく現経営陣の職務執行も検証してください。
- 委員・調査担当者の選任、資料へのアクセス、聞き取り及び報告書の作成について、検証対象者から独立した仕組みを確保してください。
- 確認できた事実だけでなく、確認できなかった事項、その理由及び調査上の制約も明らかにし、追加調査と是正措置につなげてください。
調査の照明を、渡辺氏自身にも向けてください
プルデンシャルの調査目的と比べて問われるのは、ラストワンマイルが同じ名称の委員会を置くかではなく、経営陣自身の役割まで検証するかです。他人の責任を語ることと、自分の判断について説明することは、上場会社の経営者であれば両立させていただきたいと思います。
当時の指示や決裁について事情を知る方は、実際の担当者、依頼内容、承認の経緯が分かる記録を保全してください。元役員へ強い照明を当てるのであれば、その照明を操作している側にも光を向けるべきです。渡辺氏だけが照明係で終わる調査を、当組合は求めていません。
