元役員が在任中に重大な問題へ関与していたと主張するのであれば、調べる対象は、その人物の現在の肩書だけではありません。その人物が関わった当時の会社業務と、会社が市場へ提出した説明との整合性も確認する必要があります。
ラストワンマイルの幹部からは、渡辺誠氏が元役員の犯罪の嫌疑や役員としての適格性、書類の問題について具体的に説明しているとの情報が寄せられています。他人の書類に厳しいのであれば、自社の書類にも同じ目を向けていただきたいと思います。その検証に、退任という区切りは免除の理由になりません。
オリンパスが行ったのは、過去の説明に遡る対応です
オリンパスの2012年の信頼回復に関する公式報告には、損失計上の先送り問題について、第三者委員会の調査、2011年12月14日の有価証券報告書等の訂正、取締役・監査役の責任調査などを進めた経緯が記録されています。
比較の要点は、不正の種類や金額ではありません。過去の取引について新たな事実が明らかになった際、会社自身が過去の説明を点検し、必要な訂正と責任の検証を行ったという点です。「当時の担当者の問題」と述べるだけでは、現在も投資者が参照する書類の正確性を確保できません。
渡辺氏が語る重大性は、自社の確認範囲にも反映されるべきです
幹部からの情報では、渡辺氏は、元役員の在任中の行為と起訴状に関する情報を結び付けて説明しているということです。会社として確認すべきなのは、まず、その説明が対象とする行為、時期、職務及び根拠です。
その行為が会社の取引や上場実務に関係するのであれば、会社が当時どう理解し、何を審査側や投資者へ説明したかを照合する必要があります。単に個人名が資料に登場するという話なのか、会社の会計や監督体制に影響する具体的な事実なのかを、会社自身が整理してください。
また、役員欠格事由という法的な問題、社外性・独立性の問題、経営上の適格性の評価は、それぞれ根拠を特定する必要があります。大きな言葉を並べるだけでは、どの会社資料を、なぜ訂正すべきなのかという説明にはなりません。
上場審査で何を説明したかは、元役員だけの問題ではありません
当組合は、渡辺氏の職務実態と上場審査時の説明についても問題提起しています。社外取締役としての扱いを問われた際、当初から非常勤取締役だったと説明するよう、市川康平氏及び齊藤悟志氏に指示したとする情報です。
この点でも、必要なのは関係者の発言だけを比べることではなく、当時の選任資料、職務権限、実際の業務指示、審査への回答を突き合わせることです。元役員の説明の正確性を問うのであれば、渡辺氏自身が関わった説明についても、同じ確認が必要です。
検証では、当時既に把握していた事実と、後から得た情報を分けてください。当時知っていたのであれば当時の説明が、後から知ったのであれば現在の再点検が問われます。どちらの場合も、現在の経営陣が何を確認したかという問いは残ります。
取締役会と監査等委員会への公開質問
- 渡辺氏が問題にする元役員の行為について、会社のどの職務・取引・提出書類と関係するのかを特定しましたか。
- 上場申請書類、審査への回答、有価証券報告書、内部統制報告書等のうち、どの資料を点検し、何を根拠に訂正・追加説明の要否を判断しましたか。
- 渡辺氏自身の職務実態や上場審査への説明についても、同じ調査で確認していますか。対象から外した場合、その理由は何ですか。
- 当時の説明を作成・承認した者だけでなく、独立した立場から確認する者を置いていますか。会計監査人及び東証への説明内容を示せますか。
当組合は、書類ごとの照合と訂正判断を求めます
- 問題とする事実ごとに、関係する会社資料、記載内容、裏付けとなる原資料を整理し、事実と説明の対応を確認してください。
- 過去の説明への関与者を、その説明を検証する唯一の担当者とせず、監査等委員会が独立して判断できる体制を設けてください。
- 訂正や追加説明が必要な場合は適切な手続を進め、不要と判断した場合も、検証の範囲と判断の根拠を説明してください。
人事名簿を更新しても、過去の説明は更新されません
オリンパスの対応から確認できるのは、過去の経営に関する問題へ向き合うには、現在の会社が自分の書類を点検する必要があるということです。ラストワンマイルでも、元役員の名前を挙げるだけでなく、自社のどの説明を確認したかを示していただきたいと思います。
上場準備や会社の説明資料の作成に関わった方は、適法に保有する資料について、草案、修正、承認の経緯が分かる状態を保ってください。他人の書類を批評する前に、自社の提出書類を開いてみてはいかがでしょうか。人事名簿から名前が消えても、その人が関わった説明まで白紙になるわけではありません。
