重大な情報を知っていると語ることは、経営者として対応したことの証明にはなりません。誰から何を知り、社内のどこへ伝え、どの資料を調べ、何を是正したのか。その記録があって初めて、会社としての対応を説明できます。
ラストワンマイルの幹部から伝えられる渡辺誠氏の説明は、元役員の行為、起訴状に関する情報、今後の刑事手続の見通しにまで及びます。詳しく語るのであれば、その情報を得た後の会社の対応も、同じ詳しさで示していただきたいと思います。
ビッグモーター問題では、情報を受けた側の対応も問われました
金融庁が2024年1月25日に公表した行政処分では、ビッグモーターの不正請求だけでなく、損保ジャパンが不正の兆候や実態に関する報告を受けながら、十分な対応を取らなかったことが指摘されています。会社内の報告や、当局に伝えるべき重要な情報の扱いも問題となりました。
この事例が示すのは、実行した人物や取引先の行為とは別に、情報を受けた会社の判断も検証されるということです。保険業法に基づく処分を他業種へそのまま当てはめるのではなく、警告情報を受けた組織がどう動いたかという点を比較すべきです。
「問題があるのは相手側です」という説明だけでは、なぜ調べなかったのか、なぜ報告しなかったのかという質問に答えたことになりません。情報を持つ側には、その情報をどう扱ったかという別の論点があります。
国税調査から幹部への説明まで、会社の対応を時系列で示してください
当組合は、2024年5月末にラストワンマイル及び関係先に国税当局の一斉調査が行われたことを把握しています。また、馬見塚メモには、同社や渡辺氏、関係者・関係法人の取引に関する記載があります。これらについて、会社が何を把握し、どのような確認を進めたかを問うています。
さらに、幹部からは、渡辺氏が元役員等への対応について「自分が仕掛けた」という趣旨の説明をしているとの情報が寄せられています。これらを別々の話として並べるだけでなく、情報を把握した順序と会社の判断を、一つの時系列に整理する必要があります。
国税調査に対して何を提出したのか。会社取引に関する問題を誰が検討したのか。元役員に関する新しい情報が入ったとき、過去の判断を見直したのか。経営者の説明が具体的になるほど、この時系列も具体的に示せるはずです。
監査法人への報告と、幹部への話は同じではありません
幹部に事情を説明したことと、監査等委員会や会計監査人へ検証可能な資料を提出したことは別です。情報の一部だけを伝えた場合と、会社の関与を含む全体像を伝えた場合も、区別しなければなりません。
当組合が求めるのは、「監査法人には話しています」という結論だけではありません。どの資料を渡し、どの取引を説明し、どの質問を受け、その質問にどう答えたかという対応関係です。東証への相談についても、抽象的な一般論を聞いたのか、具体的な会社の事実を提示したのかで意味が異なります。
当時は十分な根拠がなかったというのであれば、その後どの資料が加わったのかを示してください。今も根拠を確認できていないのであれば、幹部に対して重大な展開を断定するように説明した理由が問われます。知っていた場合にも、確認できていない場合にも、会社が説明すべき事項はあります。
渡辺誠氏と会社の監督機関への公開質問
- 国税調査、馬見塚メモ及び元役員に関する情報について、会社が最初に認識した日と、その時点の確認資料を示せますか。
- 情報を把握した後、調査を行う、行わない、追加確認を待つという判断を、それぞれ誰が行いましたか。その理由は記録されていますか。
- 監査等委員会、会計監査人及び東証へ、会社自身と現経営陣の関与も含めて説明しましたか。説明から外した事項がある場合、その理由は何ですか。
- 渡辺氏が幹部へ説明した内容は、これらの機関へ報告した内容と一致していますか。相違がある場合、どちらの情報を会社として採用していますか。
当組合は、把握後の判断を独立して検証するよう求めます
- 情報の把握、社内報告、調査、外部への相談、開示判断を、日付と根拠資料に対応させて整理してください。
- 当時対応を決めた人物だけで、その対応の適否を判断せず、独立した立場から検証してください。
- 報告漏れ、調査不足又は説明の不一致が判明した場合は、必要な追加報告と是正を行い、なぜその状態が生じたかまで説明してください。
情報通であることより、対応した記録を示してください
問題について情報を持つことは、会社の対応を前へ進めるために使われるべきです。元役員の責任を語る場面では詳しいのに、自社の監督や報告を問われると抽象的になるという説明では、情報を何のために使っているのかが分かりません。
会社へ問題を報告した方は、伝えた内容、相手、返答、その後の経緯が分かる記録を保全してください。渡辺氏には、誰よりも早く知っていたという話より、知った後に何をしたかを示していただきたいと思います。「情報通」という評判は、取締役会の議事録や監査への報告の代わりにはなりません。
