この記事の要点
- 公益通報を理由とする解雇の無効や不利益取扱いの禁止には、通報先に応じた要件があります。
- 行政機関への通報では、対象の法令違反について処分又は勧告等の権限がある通報先を確認します。
- 会社には通報対応を担う者と体制に関する規定があり、常時使用する労働者が三百人以下の場合には読み替えがあります。
- 当ユニオンの実例から、通報内容の調査と、問題を申告した者への取扱いを分けて確認する論点を示します。
公益通報者保護法は、要件を満たす公益通報を理由とする解雇を無効とし、降格や減給等の不利益な取扱いを禁止するとともに、事業者の通報対応体制について定める法律です。
内部通報の窓口と行政機関への通報手順
会社への内部通報については第3条第1項第1号、行政機関等への公益通報については第3条第1項第2号に、それぞれ要件が定められています。下の手順表は、厚生労働省の案内に沿って、必要に応じた制度相談から行政機関への提出までを整理したものです。
厚生労働省においては、公益通報者保護法に基づき、公益通報窓口を設置し、公益通報の受付を行うとともに、受理した公益通報については、通報に関する秘密を保持し、必要な調査を行い、通報対象事実があると認められる場合には、法令に基づく処分又は勧告等の措置を講じます。
出典:厚生労働省「公益通報者の保護」
手続きの流れ
| 手順 | すること | 窓口・提出先 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 制度の疑問を相談する | 公益通報者保護法や公益通報制度全般について不明な点がある場合は、相談ダイヤルに問い合わせます。 | 消費者庁の「公益通報者保護制度相談ダイヤル」 | 厚生労働省「公益通報者の保護」 |
| 権限のある通報先を探す | 通報先は厚生労働省本省以外になる場合もあるため、法令違反事実について処分又は勧告等の権限を有する通報先を検索します。 | 公益通報の通報先・相談先 行政機関検索 | 厚生労働省「公益通報者の保護」 |
| 内容を記載して通報する | 連絡先、被通報者、法令違反またはそのおそれがある行為の概要を可能なかぎり記載し、入力フォーム又は郵送で通報します。 | 厚生労働省大臣官房総務課行政相談室 | 厚生労働省「公益通報者の保護」 |
入力フォームと証拠書類の記録媒体を確認する
厚生労働省の公益通報入力フォームは、暗号化通信で保護されています。ブラウザのバージョンによって画面が表示できない場合には、同省が案内する対処方法を確認します。
証拠書類などを記録媒体に格納する場合、同省はCD/DVDの利用を求めています。USBメモリー、SDカード等は、セキュリティ上の都合により読み取り不可とされています。
公益通報者保護法が定める通報者の保護と会社の義務
第3条は解雇の無効、第5条は不利益取扱いの禁止、第11条は事業者がとるべき措置を定めています。働く人に対する取扱いの規定と、会社が通報に対応するための規定を分けて確認します。
公益通報者保護法第3条(解雇の無効)
労働者である公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る。第九条において同じ。)が行った解雇は、無効とする。
一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該役務提供先等に対する公益通報
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
第3条第1項第1号は、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」の「当該役務提供先等に対する公益通報」を定めています。この公益通報をしたことを理由として、その労働者を自ら使用する事業者が行った解雇は無効です。
公益通報者保護法第5条(不利益取扱いの禁止)
第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならない。
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
2 前条に規定するもののほか、第二条第一項第二号に定める事業者は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをしてはならない。
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
第5条第1項は、使用し、又は使用していた公益通報者に対し、第3条各号に定める公益通報をしたことを理由とする「降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱い」を禁止しています。
第2項は、指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者について定めています。第3条各号に定める公益通報をしたことを理由として、労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いを禁止しています。
公益通報者保護法第11条(事業者がとるべき措置)
事業者は、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
2 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
3 常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。
出典:e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新のデータ)
第11条第1項は、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報を受け、通報対象事実の調査と是正に必要な措置をとる業務に従事する者を定めるよう、事業者に求めています。第2項は、対象となる公益通報に応じ、適切に対応するための「必要な体制の整備その他の必要な措置」を求めています。
第3項は、「常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者」について、第1項と第2項をそれぞれ「定めるように努めなければ」「とるように努めなければ」と読み替えています。
改正法の施行状況
公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)は2025年6月11日に公布され、消費者庁によると2026年12月1日から施行されます。この記事が引いた第3条・第5条・第11条は、施行前の条文です。
e-Gov法令検索の施行後の版では、第3条第1項に違反してされた解雇と懲戒は無効とされます(第2項)。この無効の規定の適用については、公益通報をした日などから1年以内のものは公益通報を理由としたものと推定されます(第3項)。第5条は特定受託事業者に対する不利益取扱いの禁止になり、正当な理由なく公益通報者を特定することを目的とする行為の禁止(第11条の3)が加わります。罰則として、第3条第1項に違反して解雇や懲戒をした者には「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金」が定められています(第21条第1項)。
当ユニオンの実例にみる通報内容の調査と通報者への対応
当ユニオンは2026年9月14日の記事で、株式会社ラストワンマイルの幹部・秘書から寄せられた内部通報を取り上げました。同記事では、社内で共有された説明や対外連絡、会社資源の使用状況を問題にし、情報管理上の問題を内部通報者探しや報復行為にすり替えないよう求めています。
ព័ត៌មានដែលសហជីពរបស់យើងទទួលបានលើកនេះបានមកពីនាយកប្រតិបត្តិនៃក្រុមហ៊ុន Last Mile និងលេខាធិការរបស់លោក Makoto Watanabe ដែលបានផ្តល់របាយការណ៍ផ្ទៃក្នុងអំពីការពន្យល់ដែលបានចែករំលែកនៅក្នុងក្រុមហ៊ុន សេចក្តីថ្លែងការណ៍របស់លោក Watanabe ការទំនាក់ទំនងខាងក្រៅ និងការប្រើប្រាស់ធនធានរបស់ក្រុមហ៊ុន។
ក្នុងអំឡុងពេលនោះ ភាគីរបស់លោក Watanabe ត្រូវបានគេរាយការណ៍ថា បានផ្តល់អាទិភាពដល់ការកំណត់អត្តសញ្ញាណ និងលុបបំបាត់អ្នកផ្តល់ព័ត៌មានសម្ងាត់ ជាជាងការធ្វើការស៊ើបអង្កេតឯករាជ្យរាល់ពេលដែលបញ្ហាមួយលេចចេញមក។
出典:当ユニオンの記事「[សហជីពកម្មករ Last Mile] ព័ត៌មានជំនួយផ្ទៃក្នុងពីសហការីជិតស្និទ្ធរបស់លោក Makoto Watanabe ទាក់ទងនឹង "យុទ្ធសាស្ត្រលាលែងពីតំណែង និងការកាត់បន្ថយបុព្វលាភក្នុងខែវិច្ឆិកា" របស់គាត់」(2026年9月17日)
併せて、勧誘を断った従業員や問題を申告した者への不利益取扱いの有無、取引先との関係への影響、会社に生じ得る賠償その他の責任を検討したかの確認を求めます。
出典:当ユニオンの記事「[សហជីពកម្មករ Last Mile] ទាក់ទងនឹងគោលបំណងនៃខ្សែទូរស័ព្ទរាយការណ៍របស់ផ្សារហ៊ុនតូក្យូ」(2026年9月17日)
主題に関する当ユニオンの公開質問
| 公開質問のある記事 | 未回答の質問 | 回答 | 最も古い未回答の質問 |
|---|---|---|---|
| 12本 | 16件 | 0件 | 2026年6月14日([សហជីពកម្មករ Last Mile] ទាក់ទងនឹងព័ត៌មានទំនាក់ទំនងផ្លូវការសម្រាប់ការចរចារួម) |
表の数は、2026年10月29日時点の当ユニオンの台帳で数えたものです。
通報者の特定・排除を優先したとする内部情報
2026年9月17日の、渡辺誠氏の側近からの内部通報を扱った記事では、内部通報者の特定と排除が優先されてきたとする情報を取り上げています。同記事は、通報者と疑った従業員を専門性と異なる部署へ異動させる対応や、会社端末、聞き取り、人事評価等を使う情報提供者の特定を問題にしました。
同記事は、会社の会計データ、社内チャット、取締役会議事録など、通報内容に関わる記録も挙げています。当ユニオンは、株式会社ラストワンマイルがこれらの記録に即して通報内容を調べる体制と、通報者への取扱いを分けて検証することが、第11条の調査・是正に関わる論点になるとみます。
東京証券取引所への情報提供で求めた記録確認
当ユニオンは2026年9月17日の別の記事で、東京証券取引所へ情報提供を行ったと記録しています。会社の投資勧誘等に関する調査記録への照会に加え、問題を申告した者への不利益取扱いの有無の確認を求めました。
従業員への聞き取りについては、勧誘や人事に関与した者の影響を受けない方法を確保するよう求めています。また、会社が把握した日、社内報告先、調査主体、確認資料、事実認定、開示判断などを、時系列と裏付け資料を付して報告させるよう求めました。
同記事は、2026年6月12日付の不起訴処分と、同年7月9日付の不起訴処分理由告知書にある「嫌疑不十分」を示し、犯罪の確定を前提とする通報ではないと明記しています。当ユニオンは、この処分結果と、会社が何を調べ、問題を申告した者をどう扱ったかは、分けて確認すべき事項とみます。
労働基準法などの違反は労働基準監督署へ申告・相談する
労働基準法などの違反を具体的に申告したい場合は、労働基準監督署への申告・相談が選択肢になります。これは、公益通報制度の仕組みを相談する場面とは区別して考えます。詳しい手続きは窓口のページで確かめてください。
厚生労働省の案内では、都道府県労働局及び地方厚生支局の法令遵守に関する情報は、大臣官房地方課地方支分部局法令遵守室で受け付けています。勤め先の事業者の違反を伝える場合と、これらの地方支分部局について情報を伝える場合では、案内される受付先が異なります。
- 労働基準監督署への申告・相談:会社が労働基準法などに違反しているときは、その事実を労働基準監督署に申告できます(労働基準法第104条)。所在地は厚生労働省の一覧で確かめられます。
内部通報への報復に関する保護と行政通報の要件を確認する
第3条と第5条は、通報後の人事上の取扱いを一律に禁止する規定ではありません。条文に定める公益通報をしたことを理由とする解雇や不利益な取扱いについて、保護を定めています。
厚生労働省への通報には権限や目的の要件がある
厚生労働省への通報では、同省が法令違反事実について処分又は勧告等の権限を有していること、通報に不正の目的がないことなどが要件です。通報者についても、対象の事業者へ労務提供している労働者等であることのほか、必要と認められるその他の者という条件が示されています。
相当の理由がある場合と書面を提出する場合を分ける
同省の案内は、法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合を挙げています。これに加え、法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしていると思料し、氏名、住所、法令違反行為の内容等の必要事項を記載した書面を提出する場合も示しています。これらは、いずれかの要件を満たす場合として案内されています。
よくある質問
公益通報とは、どのような通報ですか
厚生労働省の説明では、公益のために事業者の法令違反行為を通報するものです。法による保護を確認する際は、通報内容だけでなく、通報先に応じた要件も確認します。
会社に通報してからでないと行政機関へ通報できませんか
第3条第1項第2号と厚生労働省の案内では、会社への通報を先に行うことは要件として挙げられていません。行政機関への通報について定められた、処分又は勧告等の権限や、相当の理由又は書面提出に関する要件を確認します。
労働者が三百人以下の会社では通報者保護も対象外ですか
第11条第3項が読み替えるのは、同条第1項と第2項の事業者の措置であり、第3条や第5条の保護ではありません。会社の対応体制に関する規定と、通報を理由とする解雇・不利益取扱いに関する規定を分けて確認してください。
出典
- 厚生労働省「公益通報者の保護」
- e-Gov 法令検索「公益通報者保護法」(2026年7月24日更新)
- 消費者庁「公益通報者保護法と制度の概要」
- e-Gov 法令検索「公益通報者保護法(令和7年法律第62号による改正後。2026年12月1日施行)」
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