【ラストワンマイル労働組合】最大の経営リスクは渡辺誠氏本人ではないか 7本の研修動画から見えた上場企業CEOの危険な経営思想

ラストワンマイル労働組合は、株式会社ラストワンマイルで現在も勤務する複数の組合員から、代表取締役会長兼CEOである渡辺誠氏の発言や行動について、上場企業の代表者として適切なのかという相談を継続的に受けています。

今回、渡辺誠氏が従業員を対象として実施した、法務、労務、人事、総務、経理、情報システム、営業媒体に関する7本の研修動画及び文字起こしが、同氏の発言を検証する資料として、元ラストワンマイル従業員である組合員から当労働組合へ提供されました。

結論から言えば、これらの研修動画が社内において公開されており、動画が真正であることは他ならぬラストワンマイルの従業員全員が証明可能であるため、とすれば渡辺誠氏は、上場企業の代表取締役として安心して大きな権限を預けられる経営者には見えません。

むしろ、株式会社ラストワンマイルにとって管理すべき最大の経営リスクが、代表取締役本人ではないかという深刻な疑問が生じます。

目次

問題は言葉遣いの悪さではなく、判断基準そのものです

渡辺誠氏の研修では、「アホ」「バカ」「一番下っ端」「使えない人」といった、上場企業の代表者による社内研修として品位を疑わせる表現が繰り返されています。

しかし、今回の資料における本質的な問題は、言葉遣いが荒いことではありません。乱暴な言葉を削除して丁寧な表現に直しても、説明されている経営判断の内容そのものが危険だからです。

7本の研修を横断すると、渡辺誠氏は、法令や契約に従うべきかという問いを最初に置いていません。発覚する確率は何%か、裁判で負ける確率は何%か、監査に耐えられるか、会社が損害を支払えるか、上場廃止になるかという基準で、実行の可否を判断しようとしています。

これは一般的なリスク管理とは異なります。

企業経営では、複数の法的見解があり、適法性が直ちに明確にならない問題について、訴訟リスクや事業上の利益を比較することがあります。しかし、法律や契約で禁止される可能性が高い行為まで、利益と損害額を比較し、会社が支払えるなら実行してよいという考え方にはなりません。

適法かではなく、バレるかを考える法務

法務研修において、渡辺誠氏は、代理店等から受け取った顧客リストについて、転売を認める契約上の明確な根拠がないにもかかわらず、他社へ転売する事例を取り上げています。

「元の会社から訴えられるリスクは、今回の場合なら1%もない。そもそも転売することは相手にも分からないからです」

ここで判断の中心に置かれているのは、顧客リストの転売が契約上許されているかではありません。提供元が転売を知る可能性と、訴訟を提起する可能性です。

相手に知られなければ訴えられない。訴えられる確率が低ければ、経営側がそのリスクを飲み込んで実行できる。この発想は、コンプライアンスを「ルールを守ること」から「違反を発見される確率を計算すること」へ変えてしまいます。

さらに渡辺誠氏は、法的リスクが30%、50%、90%であっても、役員会が受け入れると判断すれば実行するとの趣旨を述べています。

「そのリスクが30%であろうが、50%であろうが、90%であろうが、役員会で飲み込むと言ったらやる。判断するのは経営者です」

法的リスクが90%というのは、単なる軽微な不確実性ではありません。それでも、利益が期待でき、役員会が責任を負うと決めれば実行できるというのであれば、法務部門は会社を止める部署ではなく、危険な行為に確率を付けて経営者へ渡す部署になります。

情報を守るのではなく、監査に通るためのセキュリティ

情報システム研修にも、同じ判断基準が現れています。

「監査に耐えられるラインのセキュリティです。逆に言うと、監査に耐えていたら情報漏洩することもあると思う」

「常にギリギリの、監査に耐えられる営業寄りのセキュリティ判断を、システム部はしなければならない」

情報セキュリティ監査を通過することは、顧客情報が絶対に漏れないことを保証しません。だからこそ、企業は監査項目を満たすだけでなく、自社が保有する情報の性質、攻撃手法、従業員による持出し、委託先、システム連携等の具体的なリスクを考慮して、必要な安全管理措置を講じる必要があります。

ところが渡辺誠氏の説明では、監査を通過できる最低限のラインが、会社が目指す基準のように扱われています。

さらに、USBを利用できる状態にすると、オペレーターが顧客データを持ち出す可能性があることまで認識しながら、その危険を受け入れるかは経営側が判断し、情報システム部は「危険だから駄目」と判断してはならないと説明しています。

情報システム部は、本来、専門的な立場から、技術上又は契約上受け入れられない危険を止める役割も担います。その部署へ「止めるな、漏れる確率だけ報告しろ」と命じれば、専門部門は安全を守るブレーキではなく、アクセルを踏む経営者へ崖までの距離を報告する係になります。

統制を弱め、事故が起きた従業員だけを処罰する

経理及び総務研修では、会社カードの発行や物品購入について、現場の裁量を大幅に増やし、事前承認を減らす方針が示されています。

権限を現場へ移し、少額の申請作業を削減すること自体は、合理的な業務改善になり得ます。

しかし、渡辺誠氏は、会社カードを飲食店等で私的に使用する従業員が現れる可能性を認識しながら、それも経営側が受け入れるリスクであると説明しています。

「クレジットカードを勝手に持って、どこかの飲み屋で勝手に切っている奴も、今後いるかもしれない。まあいい。そのリスクは経営で飲み込もう」

その一方で、私的利用が発覚した従業員については、減給又は解雇といった処分を行えばよいとしています。

つまり、経営側が意図的に事前統制を弱め、不正が起きる可能性を受け入れながら、実際に問題が起きたときには、従業員個人へ重い責任を負わせる構造です。

カードを大量に発行し、全ての利用を確認せず、ランダムに抽出された人だけが処分を受けるのであれば、同じ行為をしても、発見された人と発見されなかった人で結果が変わります。

経営者が穴のある制度を設計し、その穴に落ちた従業員だけを処罰する制度は、公正な内部統制とは言えません。

「経営に支障がない」は、何でも許す言葉ではありません

渡辺誠氏の研修では、「経営に支障がない」という言葉が、極めて頻繁に使われています。

10万円や100万円の会計上の差額があっても会社は潰れない。会社カードの私的利用が一部で起きても会社は潰れない。二重払いが発生しても会社は潰れない。間違った人を採用しても会社は潰れない。

しかし、会社が直ちに倒産するかどうかは、行為の適否を判断する唯一の基準ではありません。

100万円の誤差が、偶発的な入力ミスなのか、継続的な会計処理の誤りなのか、不正な支出なのかによって意味は変わります。会社カードの私的利用も、金額の問題だけではなく、組織の規律、公平性、税務処理、株主資産の適正な利用という問題を含みます。

一つ一つが少額でも、「多少ならよい」という判断を全部門で積み重ねれば、会社全体として大きな事故になります。

会社が責任を取ると言いながら、支払うのは本人ではありません

渡辺誠氏は、法的問題や事故が起きても、経営側が責任を取る、こちらが全部対応するとの趣旨を述べています。

「多少何か問題が起こったとしても、それによって営業利益が伸びるのであれば、こちらが全部ケツを拭く」

一見すると、自らが責任を引き受け、従業員を守る力強い経営者の発言にも聞こえます。

しかし、実際に訴訟費用、損害賠償、行政対応、システム改修、顧客対応、信用低下の損失を支払うのは、渡辺誠氏個人ではありません。株式会社ラストワンマイルです。

その会社の資金は、渡辺誠氏だけの所有物ではありません。株主が出資し、従業員が働き、顧客が代金を支払って形成された法人の財産です。

経営者が自ら危険な取引を選び、問題が起きたら会社資金で解決することを「自分が責任を取る」と表現するのは、責任の所在を誤魔化しています。

本人が取っているのは判断の主導権であり、負担を引き受けるのは株主、従業員、顧客です。

労務では、会社の都合を先に決めて「理由を作る」

労務研修では、短期間で退職する従業員にかかる事務コストを削減するため、社会保険や雇用保険の手続開始を1か月程度遅らせる案が示されています。

「社会保険や雇用保険の手続に入るのを、そもそも1か月ずらしておけばよい」

さらに、事務手続上の確認に時間がかかるという理由を作り、外形を整える趣旨の発言もあります。

「事務手続上、確認が必要だからという理由は作ってもらう」

「建前はしっかりすればよいから。法に違反しないように」

この発言で深刻なのは、法令上の届出期限を調べ、その期限内で最も効率的な方法を検討したのではなく、会社のコストを削減するために手続を遅らせる方針を先に決め、後から対外的な理由を整えようとしていることです。

本当に適法で合理的な運用であれば、「理由を作る」必要はありません。実際の目的と法的根拠を、そのまま従業員や行政機関へ説明すれば済みます。

人事では、組織の問題を従業員個人へ押し付ける

人事研修では、従業員満足度調査を毎月行う必要性について疑問を示す中で、従業員の感情変化を「情緒不安定」と表現しています。

「毎月毎月、そんなに心変わりするのか。そんな情緒不安定な人はいないから」

調査頻度を見直す議論自体には合理性があります。しかし、従業員の満足度が短期間で変化することを個人の情緒不安定と表現すれば、職場環境、上司、業務量、評価、ハラスメント等の組織的な原因が見えなくなります。

また、採用した従業員が入社後に問題を起こした場合には、面接した人が全責任を負うという趣旨も述べています。

「採用した人が問題を起こしたら、面接した人が責任を取らないといけない。全部です」

採用後の従業員の行動には、教育、配置、上司、業務環境、評価制度、会社文化が影響します。それにもかかわらず、将来起きた問題を面接官個人へ全部負わせれば、経営者が作った制度や職場環境の責任は消えてしまいます。

管理部門を、経営者へ異議を唱えない組織へ変えている

7本の研修を通して最も深刻なのは、渡辺誠氏が、会社の各管理部門へ共通した役割を与えようとしている点です。

法務部は、違法又は禁止されているため実行できないと止めるのではなく、裁判で負ける確率を計算する。情報システム部は、危険だから実行できないと止めるのではなく、情報が漏れる確率を報告する。経理部は、正確性を追求するのではなく、会社が耐えられる差額を処理する。

労務部は、従業員の権利を守るのではなく、手続コストを減らす理由を考える。総務部は、不正利用を防ぐのではなく、発覚した人を処罰する。人事部は、職場環境を改善するのではなく、問題の責任を面接官へ負わせる。

会社を守るためのブレーキであるはずの部門が、経営者の判断を止めず、危険度を計算して実行可能にする補助部門へ変えられています。

この状態では、渡辺誠氏の判断が誤っていたときに、社内の誰が止めるのでしょうか。

最大のリスクを探した結果、代表取締役本人が残りました

渡辺誠氏は、各部門に対し、会社の営業利益を増やすため、無駄な作業を減らし、会社に支障を与えるリスクを見つけるよう求めています。

その問題意識自体は間違いではありません。無意味な承認、重複した確認、利用されない書類、目的を失った業務を削減することは、経営者に必要な仕事です。

しかし、7本の研修を確認した結果、株式会社ラストワンマイルにとって最も大きなリスクは、管理部門の作業量でも、現場従業員の誤発注でも、会社カードの私的利用でもないように見えます。

法務、会計、労務、情報セキュリティ、個人情報保護、顧客対応にまたがり、全社的に危険な判断基準を示し、それを正式な研修として各部門へ浸透させようとする代表取締役本人です。

従業員が1万円のマウスを誤って購入しても、会社への損害は1万円です。しかし、代表取締役が法令遵守と内部統制の考え方を誤れば、会社全体の判断が同じ方向へ傾きます。

その損害は、1万円や10万円では終わりません。顧客離れ、行政処分、訴訟、情報漏洩、従業員の退職、採用難、株価下落、上場会社としての信用喪失へ広がります。

ラストワンマイル労働組合の率直な評価

ラストワンマイル労働組合は、今回の研修動画だけを根拠として、渡辺誠氏が犯罪を行った、又は全ての指示が実際に実行されたと断定するものではありません。

研修で語られた内容の一部が、極端な例を用いた説明だった可能性もあります。実際の運用段階では、法務、経理、労務、監査部門が修正し、危険な方針が導入されなかった可能性もあります。

しかし、原動画が保全され、文字起こしどおりの発言が正式な従業員研修として行われたのであれば、次の評価は避けられません。

渡辺誠氏は、上場企業に必要なコンプライアンス、内部統制、顧客保護及び従業員保護を、営業利益を妨げるコストとして軽視する傾向が極めて強い経営者に見えます。

しかも、その考えは一度の失言ではなく、複数の管理部門へ共通の判断基準として教えられています。

人物全体を一つの言葉で「善人」「悪人」と決めることは適切ではありません。しかし、今回の資料に現れている渡辺誠氏は、少なくとも上場企業の代表取締役として、株主、従業員、顧客が安心して大きな権限を預けられる人物には見えません。

取締役会と監査等委員会へ問います

  1. 取締役及び監査等委員は、7本の研修動画と発言内容を把握していましたか。
  2. 渡辺誠氏が示した「発覚確率」「監査に耐える最低線」「会社が損害を支払えるか」を中心とする判断基準を、適切な経営方針と評価していますか。
  3. 法務、経理、労務、総務、人事及び情報システム部門は、代表取締役の指示を拒否又は取締役会へ直接報告できる体制でしたか。
  4. 研修で示された方針のうち、実際に導入されたものを調査しましたか。
  5. 顧客情報の転売、社会保険手続、会社カード、会計差額、歩合給、文書保存及び外部システム接続について、第三者を含む調査を実施しますか。
  6. 渡辺誠氏が現在も代表取締役会長兼CEOとして適格であると判断する具体的根拠を、株主及び従業員へ説明できますか。

会社のブレーキを外した人物が、会社のハンドルを握り続けてよいのですか

優れた経営者は、リスクを恐れて何もしない人物ではありません。必要なリスクを取りながら、越えてはならない法令、契約、倫理、顧客及び従業員の権利を明確に区別できる人物です。

リスクを取ることと、発覚しなければよいと考えることは違います。管理コストを削減することと、内部統制を骨抜きにすることも違います。責任を取ることと、会社の金で損害を支払うことも違います。

渡辺誠氏が研修で示した経営思想は、アクセルを踏む力ばかりを重視し、法務、経理、労務、情報システムというブレーキを弱めるものに見えます。

そして、そのブレーキを弱めるよう命じた人物が、現在も会社のハンドルを握っています。

株式会社ラストワンマイルの取締役会と監査等委員会が本当に管理すべき最大の経営リスクは、現場従業員の小さなミスではありません。

代表取締役会長兼CEOである渡辺誠氏本人ではないでしょうか。

渡辺誠社長の危険思想を植え付けるための恐怖の社員研修シリーズ

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