株式会社ラストワンマイルは上場企業です。投資家は、同社が公表する売上高、営業利益、費用、資産及び負債が、適切な会計処理と内部統制に基づいて作成されていることを前提として投資判断を行います。
ところが、現ラストワンマイル在籍者から当組合に提供された経理部門を対象とした研修動画では、代表取締役会長兼CEOの渡辺誠氏が、「100万円、200万円、1000万円ずれてもよい」との趣旨を述べ、経理業務の正確性より処理コストの削減を優先するよう繰り返しています。
「100万、200万、1000万円ずれても別にいい」
研修では、現場が管理する数字と経理上の数字をどこまで細かく一致させるかが議論されました。
「極端にずれていたら別だけど、100万円、200万円、1000万円ずれても別にいいんじゃない」
参加者が「1000万円ちょっと」と確認した後も、渡辺誠氏は、現場とのずれが一定範囲であれば経理科目を絞り、処理を簡略化するよう求めています。
もちろん、会計には重要性という考え方があります。全ての1円単位の誤差を同じ労力で調査することは合理的ではありません。
しかし、重要性は「会社が今すぐ倒産する金額か」で決まるものではありません。金額の大きさ、勘定科目、発生原因、反復性、不正との関係、投資家判断への影響を総合して評価する必要があります。
毎月1000万円ずれるなら、各社へ適当に足す
「毎年、毎月1000万円ずれるなら、各社へ100万円ずつ足そうとか、200万円ずつ足すというルールにすればよい。ルールで決めてしまえばよい」
実際の取引、契約、請求、入金、役務提供に基づかず、差額を埋めるために各社へ一定額を配分するのであれば、その数字は何を表しているのでしょうか。
ルールを作れば、数字の根拠が生まれるわけではありません。根拠のない配分を毎月同じ方法で繰り返せば、誤りが組織的かつ継続的になるだけです。
不明な支出は雑費へ入れて終わらせる
渡辺誠氏は、内容を確認できない支出についても、何らかの科目へ入れて処理を終えるよう求めています。
「不明でも、雑費でも何でもよいから、どこかに入れて、とりあえず処理して終わらせて」
「後で分かったときは、もうなかったことにすればよい。過去へ戻って帳簿をやり直すのではなく、微々たる数字なら分かった時点で振り替えればよい」
支出内容が分からないという事実は、そのまま内部統制上の重要な警告です。証憑がないのか、私的利用なのか、二重払いなのか、取引先が誤っているのか、勘定科目だけが不明なのかによって、対応は全く異なります。
それを「雑費」として埋めれば、帳簿上は処理済みになりますが、現実の問題は何も解決していません。
消費税率は「税務署が得する8%」
飲食店の支払が軽減税率8%なのか、標準税率10%なのか不明な場合についても、驚くべき説明があります。
「税理士の言うことを信じては駄目。税務署です」
「8%だったら税務署が得をする。だから全部8%でよい。8%で処理する」
消費税率は、税務署と会社のどちらが得をするかで決めるものではありません。取引内容、提供方法、証憑に基づいて決まります。
税務署に有利な処理をしておけば問題にならないという考え方は、正しい会計処理ではなく、指摘を受けにくい方へ数字を寄せる処理です。
税務署に棚を見させればよい
「明細は税務署に見てください、あそこの棚に入っていますと言えばよい。それを見るのは税務署さんの仕事でしょう」
帳簿と証憑を整理し、取引内容を説明できる状態にしておくのは、税務署ではなく会社側の役割です。
税務調査官が倉庫や棚から資料を探し出し、会社の代わりに取引を分類してくれるわけではありません。
株式会社ラストワンマイルへの公開質問
- 研修で話題となった1000万円規模の差額は、どの会計期間、どの勘定科目、どの法人間で発生していましたか。
- 差額を各社へ一定額ずつ配分する処理は、実際に行われましたか。
- 不明な支出を雑費等へ仮計上した後、未解明のまま残った金額はいくらですか。
- 過年度の誤りが判明した際、修正仕訳又は訂正開示を行わなかった事例はありますか。
- 消費税率が不明な取引を、一律8%で処理したことはありますか。
- 会計監査人は、この研修内容及び経理運用を把握していましたか。
- 監査等委員会は、1000万円のずれを許容する判断を適切と評価していますか。
会計は、会社が潰れなければ適当でよい数字ではありません
経理業務の効率化は必要です。しかし、入力項目を減らすことと、根拠のない数字を入れることは違います。軽微な誤差を許容することと、1000万円の差額を適当に配賦することも違います。
会社経営に支障がないという言葉は、会計処理の正しさを証明しません。
投資家が知りたいのは、株式会社ラストワンマイルが1000万円の誤差に耐えられる会社かどうかではありません。公表された1000万円が、現実の売上、費用、資産又は負債を正しく表しているかです。
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